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2014年8月4日の日本経済新聞社朝刊の社告「企業価値を創る情報開示とは:『統合報告』シンポ開催 9月2日」が目にとまりました。
http://www.nikkei.com/article/DGKDZO75186570U4A800C1MM8000/
http://adnet.nikkei.co.jp

統合報告とは国際統合報告評議会(International Integrated Reporting Council) http://www.theiirc.org/ (IIRC)が中心になって進めている企業報告の新しいあり方で、これまで別々に作成されてきた財務情報に関する報告と非財務情報に関する報告(ESG=環境、社会、ガバナンスに関する報告)を統合し、企業の長期にわたる価値創造に関わる情報をより分かりやすく投資家をはじめとするステークホールダーに提供することをめざしたものです。実際に作成される報告書が統合報告書と呼ばれます。

下記のサイトが分かりやすく統合報告について説明しています。

新日本有限責任監査法人 市村清「統合報告」を語るシリーズ(全10回)
http://www.shinnihon.or.jp/services/advisory/ir/column/

野村インベスター・リレーションズ
シニアコンサルタント 佐原 珠美
企業の価値創造プロセスを伝える「統合報告」とは
1)非財務情報の重要性の高まりと統合報告の背景
http://nomura-ir-webtsushin.e-ir.ne.jp/column/integratedreport01.html
2)日本の統合報告の現状と策定のポイント
http://nomura-ir-webtsushin.e-ir.ne.jp/column/integratedreport02.html

これがどのようにアーカイブズと関係するのか?

前回のブログ(奥村健治「企業史としての記録保存と活用」(2006年))で触れたように、2006年の段階で「環境会計という概念のような考え方をアーカイブや記録管理に応用できないか」という意見が記録管理やアーカイブズ関係者の間で表明されていました。

そこで思い出したのが、2012年8月の国際アーカイブズ評議会(ICA)のブリスベン大会でのインネッケ・デセルノIneke Deserno(NATO=北大西洋条約機構のアーキビストでありオーストラリア・モナシュ大学大学院博士課程に在籍中)の発表「レコードキーピング:企業の社会的責任の証拠か?」です。

公益財団法人渋沢栄一記念財団実業史研究情報センター「ビジネス・アーカイブズ通信」41号(2012年11月6日発行)では次のように紹介しています。
http://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bn/20121106.html

「発表はデセルノ氏の博士論文のためのリサーチの途中経過の報告でした。グローバル企業が発行する「サステナビリティ・レポート」は企業が社会、経済、環境に影響を与える活動や決定に関する情報を提供してくれます。記録は企業活動と決定に関する証拠なので、レコードキーピングの原則とプログラムは、サステナビリティ報告業務における重要な要素です。しかしながら現時点では企業は持続可能な活動を支援するために、レコードキーピング・プログラムを使用していないし、さらに重要なことは記録に関わる専門職の人々がこれらの活動に十分に関わっていない点にあります。このペーパーでは、CSRにおける記録管理の役割と、記録がサステナビリティ報告に寄与するものかどうかという問いを検討しています。デセルノ氏はウェブ上で公開されている各社のサステナビリティ報告を基にしつつ、関係者へのインタビューを行い、研究を進めています。

暫定的な結論として、記録の専門家たち、特に企業で働く記録プロフェッショナルは、組織の業務に積極的に関わり、それぞれの業務過程の中に、記録管理・レコードキーピングに必要な要件を組み入れるべきであることを示唆しています。そして、今こそCSRのための効果的なレコードキーピング体制を確立すべき時であると結論づけています。」

わたしもこの発表の場に居合わせました。立ち見が出るほどの盛況ぶりで、アーカイブズ、記録管理関係者が大いに注目する報告でした。

デセルノ氏の問題意識は、グローバル化した多国籍企業が透明性を確保し、信頼しうるサステナビリティ・レポートを作成するためには適切な記録管理が欠かせない、という点にあります。
http://infotech.monash.edu/research/about/centres/cosi/documents/ineke-phd-summary.pdf
(デセルノ氏の博士論文リサーチプロポーザル)

統合報告の議論でわたしが注目するのは、報告作成における記録管理の役割に加え、アーカイブズ機能のもたらす付加価値が非財務情報=ESG情報(企業の長期的価値創造に寄与する)としてより可視化される可能性がある点です。

宝印刷株式会社総合ディスクロージャー研究所編『統合報告書による情報開示の新潮流』(2014年、同文舘出版)46ページにオムロン作成「今後の企業価値の考え方」の図が掲示されています。これによると「非財務指標 見えない資産」には「理念の浸透度」「企業文化の濃さ」「CSR」「ガバナンス」「次世代経営者」といった指標があげられています。(オムロンは2012年からアニュアルレポートに変えて統合レポートを発行しています。)
http://www.omron.co.jp/ir/irlib/irlib_list.html

ビジネスアーカイブズ、企業史料関係者のこれまでの主張、すなわち「企業アーカイブズの利活用は企業理念、企業文化、ガバナンス、CSR・・・といった多様な価値に貢献する」ということが、投資家をはじめとするステークホールダーに理解してもらえる方向に進んでほしいと思います。

なお、以下の点を企業のIR関係の方からご教示いただきました。

《統合報告の導入が近年日本でもさまざまに取り上げられるようになった背景としては、スチュワードシップ・コードや年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)といったものとの関係から日本の機関投資家が、(企業報告)発行体に対してガバナンスをはじめとする中長期的な質問をするようになったこともある。さらに発行体側にもルールを課すためにコーポレートガバナンス・コードといったものの検討も始まっている》

【参考①】

平成26年6月10日 金融庁「責任ある機関投資家」の諸原則
≪日本版スチュワードシップ・コード≫~投資と対話を通じて企業の持続的成長を促すために~の受入れを表明した機関投資家のリストの公表(第1回)について
http://www.fsa.go.jp/news/25/sonota/20140610-1.html

平成26年8月7日(木)9時30分~11時00分
金融庁 コーポレートガバナンス・コードの策定に関する有識者会議(第1回)議事次第
http://www.fsa.go.jp/singi/corporategovernance/siryou/20140807.html

【参考②】

下記のIIRC関係の動画も参考になります。

Paul Druckman 国際統合報告評議会CEO
「統合報告フレームワークが解決しようとしている課題」
What problem is the integrated reporting framework trying to fix?
2013年4月15日アップロード
https://www.youtube.com/watch?v=n2Qv5L2f-So&feature=youtu.be

斉藤惇 株式会社東京証券取引所グループ代表執行役社長
「ビジネスにおける統合報告の重要性」
2011年1月17日 中国・北京で収録
2011年9月27日アップロード
https://www.youtube.com/watch?v=FJGYUldoWM4&list=UUee53PLVUpXLL5kIsfMw7aQ&index=30

英国チャールズ皇太子
「新しい統合報告フレームワークを支持する」
HRH The Prince of Wales endorses the new International Integrated Reporting Framework
2013年12月5日アップロード
https://www.youtube.com/watch?list=UUee53PLVUpXLL5kIsfMw7aQ&v=BIVWxmqGs9M&app=desktop

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