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企業のIR部門の方から、日本におけるCSRに関する考え方も変わってきているというお話をうかがいました。日本ではCSRが「法令遵守+社会貢献+環境対応」として理解されてきたものの、2010年にISO 26000(SR=社会的責任の国際規格。企業のみならず、すべての組織を対象としたもの)が発行され、国際的なスタンダードに沿ってCSRを理解する必要が生じつつあるといいます。

そこで、最近読んだ本の中でとても分かりやすくISO 26000を解説している文献の目次を紹介します。末尾の著者紹介によると、関正雄氏は株式会社損害保険ジャパンCSR部上席顧問であり、ISO26000作業部会において日本産業界代表エキスパートとして5年間規格策定に関わったほか、経団連の企業市民協議会企画部会長、国際協力NGOセンター理事他も務めているということです。

作業部会での議論の紛糾や合意に向けての粘り強い交渉の様子が伝わってきます。ひとつの事例に「4.3.5 性的指向と差別をめぐる議論」の紹介があります。文化・宗教を背景とした価値観の違いから、「性的指向(sexual orientation)を差別禁止事由の一つに入れるか入れないか最後まで紛糾し、専門のタスクチームによって議論を行った結果、最終的には「個人的関係(personal relationships)」と言い換えたうえで、差別禁止事由に入れることになったとあります。(82-83ページ)

[書誌情報]

タイトル:ISO 26000を読む : 人権・労働・環境…。社会的責任の国際規格:ISO/SRとは何か
著者:関正雄
出版者:日科技連出版社
価格:2,500円 (税別)
刊行年:2011
ページ数:163p
ISBN:978-4-8171-9393-3
出版者ページ:
http://www.juse-p.co.jp/cgi-bin/html.pl5?i=ISBN978-4-8171-9393-3

[目次]

まえがき

第1章 ISO 26000の概要

1.1 ISO 26000とは何か

1.1.1 ISO 26000をひと言でいうと
1.1.2 何が書いてあるか

1.2 CSRではなくSR規格であることの意味

1.3 規格の背景にあるもの

1.3.1 期待が失望に変わった温暖化国際交渉
1.3.2 「差異はあっても共通の責任」という考え方

1.4 ISO標準化の歴史と持続可能な発展

1.4.1 ISOは何を標準化してきたか
1.4.2 ISOはこれから何を標準化するのか

1.5 開発の経緯~難航した開発プロセス~

1.5.1 問題提起から作業部会の立ち上げまで
1.5.2 求心力を高めていった作業部会
1.5.3 規格発行後は各国で国内規格化へ

第2章 ISO 26000を理解するためのキーワード

2.1 ガイダンス文書

2.1.1 推奨事項を記述した手引き書
2.1.2 手引き書とした理由は何か
2.1.3 PDCAサイクルと認証問題

2.2 マルチステークホルダー・プロセス

2.2.1 定義
2.2.2 欧州のマルチステークホルダー・フォーラム
2.2.3 ISO 26000におけるマルチステークホルダー・プロセス
2.2.4 社会的責任に関する円卓会議

2.3 ステークホルダー・エンゲージメント

2.3.1 定義をめぐる議論
2.3.2 これまでのエンゲージメント、これからのエンゲージメント
2.3.3 経団連企業行動憲章における定義
2.3.4 コミュニケーションとエンゲージメント

2.4 サプライチェーンとバリューチェーン

2.4.1 規格策定の原動力となったサプライチェーン
2.4.2 監査からキャパシティ・ビルディングへ
2.4.3 「影響力の範囲」の議論
2.4.4 バリューチェーンが重要に
2.4.5 持続可能なカシミア・プロジェクト

第3章 規格解説その1 社会的責任の基本(箇条1~4)を理解する

3.1 基本の理解が重要

3.2 適用範囲(箇条1)

3.3 社会的責任の定義(箇条2)

3.4 社会的責任の理解(箇条3)

3.4.1 歴史的理解
3.4.2 社会的責任が求められる理由
3.4.3 持続可能な発展と組織の社会的責任の関係

3.5 社会的責任の原則(箇条4)

3.5.1 原則とは何か
3.5.2 国際行動規範の尊重
3.5.3 原則を活用する

第4章 規格解説その2 社会的責任の中核主題(箇条6)を理解する

4.1 中核主題の全体像(箇条6)

4.2 組織統治(箇条6.2)

4.3 人権(箇条6.3)

4.3.1 人権とラギー報告
4.3.2 人権パートに何が書いてあるか
4.3.3 人権デューディリジェンスとは何か
4.3.4 「加担」について
4.3.5 性的指向と差別をめぐる議論
4.3.6 今後の他の規範への影響

4.4 労働慣行(箇条6.4)

4.4.1 ILOとISOの協力覚書の意味
4.4.2 人権との関連の深さ
4.4.3 日本のCSRと労働
4.4.4 児童労働
4.4.5 労働における5つの課題

4.5 環境(箇条6.5)

4.5.1 環境問題の理解
4.5.2 汚染の予防
4.5.3 持続可能な資源の利用
4.5.4 気候変動の緩和および気候変動への適応
4.5.4 環境保護、生物多様性、および自然生息地の回復

4.6 公正な事業慣行(箇条6.6)

4.6.1 基本的な考え方
4.6.2 具体的なアクション

4.7 消費者課題(箇条6.7)

4.7.1 SRの中核主題としての特徴
4.7.2 保護すべき消費者の権利
4.7.3 持続可能な消費について
4.7.4 「消費者市民社会」を目指して

4.8 コミュニティへの参画およびコミュニティの発展(箇条6.8)

4.8.1 SRの中核主題としての特徴
4.8.2 具体的な課題とアクション
4.8.3 社会貢献とSR

第5章 規格解説その3 社会的責任を組織の活動に組み込む(箇条5および7)

5.1 社会的責任の認識およびステークホルダー・エンゲージメント(箇条5)

5.1.1 組織とステークホルダーと社会の関係
5.1.2 課題の絞込み
5.1.3 影響力の範囲
5.1.4 ステークホルダーの特定
5.1.5 ステークホルダー・エンゲージメント

5.2 組織全体に社会的責任を統合するための実践(箇条7)

5.2.1 基本的な考え方(箇条7.1~7.3)
5.2.2 組織全体に社会的責任を統合するための実践(箇条7.4)
5.2.3 社会的責任に関するコミュニケーション(箇条7.5)
5.2.4 社会的責任に関する信頼性の向上(箇条7.6)
5.2.5 社会的責任に関する組織の行動および慣行の確認および改善(箇条7.7)
5.2.6 社会的責任に関する自主的なイニシアチブ(箇条7.8)

第6章 ISO 26000をどう活用していけばよいか

6.1 規格のインパクト

6.1.1 中国とISO 26000
6.1.2 途上国の積極姿勢
6.1.3 さまざまな規範への影響
6.1.4 日本企業の反応

6.2 具体的にはどう活用したらよいか

6.2.1 考え得る活用方法
6.2.2 教育・啓発ツールとしての活用
6.2.3 企業行動憲章の活用
6.2.4 中小組織向けには
6.2.5 全ての組織の社会的責任という視点

6.3 求められている企業のリーダーシップ

6.4 結びに代えて

6.4.1 時代が求めた社会的責任規格
6.4.2 変化を生み出すためのソフトロー

あとがき
参考文献
索引
著者紹介

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そして、次の引用で本文が結ばれています。(156ページ)

「見たいと思う世界の変化に、あなた自身がなりなさい。」

‘You must be the change you want to see in the world.’

Mahatma Gandhi (1869-1948)
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2014-07-05 14.02.58

 

 

【その他参考】

川村 雅彦「サプライチェーンのCSRリスクに疎い日本企業 (その1):“日本型CSR”に潜むリスク促進要因」(ニッセイ基礎研究所『基礎研レポート』2013-09-17)
http://www.nli-research.co.jp/report/nlri_report/2013/report130917.html

藤井敏彦『ヨーロッパのCSRと日本のCSR:何が違い何を学ぶのか』(日科技連出版、2005年)
http://www.juse-p.co.jp/cgi-bin/html.pl5?i=ISBN4-8171-9160-0