帝国データバンク史料館編集による『別冊Muse2015』が刊行されました(B5判、202頁、2015年12月28日刊行)。

http://www.tdb-muse.jp/info/2016/01/muse2015.html

テーマは「記憶と記録:紡ぐ、結ぶ、伝える」。目次は下記の通りです。

【目次】

■はじめに■

■巻頭特別取材■

 

◇近くて遠い島、「樺太」から「サハリン」を訪ねて
「残された資料を集めて守り、伝えて役立てる
日本統治時代の”カラフト”アーカイブズ

国立サハリン州公文書館 館長 ラリーサ・ドラグノーワ
×
帝国データバンク史料館 館長 高津隆

敗戦時、1週間続いた文書資料の大量焼却
接収資料には王子製紙関係や一部、警察文書も

語り続けてこそ、やがて分かる記憶の価値
手書きメモや手紙は必ず残して保管

歴史が人から人へ受け継がれてきたサハリン
だからこそ歴史を保存することが何よりも重要

◇極東サハリンに刻まれた時代の記憶、誰に託して、伝えるか
:4つの国を生き抜いた、ある離散家族の記録

サハリン残留コリアン一世 趙応奎(チョウ・ウンギュ)

3歳で樺太に移住、家族8人の大所帯に
戦時下、東京に移った長兄と叔父は消息不明

ソ連軍が上陸、戦闘で町は焼け、養狐業も消滅
次兄はからくも樺太脱出、戦後41年目の母子再会

“元”日本人に厳しい監視の目、母は無国籍のまま
学歴で決まったソ連の仕事、25歳で通信制の大学へ

30歳、大学卒業後は国営の建築設計会社へ、建築部長で定年
ペレストロイカ、党員歴なくとも国営企業の支社長に再就職

人生80年、いちばんの苦労は安定したロシア人になるまで
再び家族離散? 残留一世の老後はサハリンから韓国へ

いまも忘れぬ日本語、ロシア文学を日本語訳で読む毎日
孫まで伝わらない記憶と思い、年齢差よりも時代の違い

家族の写真さえ飾れなかったソ連時代の経験
いまも語り継ぐこと、記録を残すことに抵抗

■クローズアップ■

◇ひめゆり学徒隊と沖縄戦:その記憶と体験を語り継ぐ重たい使命

公益財団法人沖縄県女師・一高女ひめゆり平和祈念財団
ひめゆり平和祈念資料館
館長 島袋淑子
副館長 普天間朝佳
説明員 仲田晃子
×
高津隆

あの日、艦砲射撃が始まる直前まで
普通の暮らしのあった”ひめゆり”たち

資料館で語り始めた元ひめゆり学徒
伝える気持ちはあっても、言葉にならないことも

“沖縄の痛み”とともに戦後を生きる
生身の戦争体験、その”思い”を次世代に託す

いち早く”次世代プロジェクト”に取り組む
非体験者が引き継ぐ”ひめゆりの心と思い”

若い世代が受け継ぎ、伝える記憶と記録
子どもの頃から身近にあった戦争の話題

どんなに伝えたいことがあっても、
ひとりよがりでは決して伝わらない

資料がなければ、その事実はなかったことになる
しかし、証言者のリアルな話を通して分かることもある

“モノ”と”ひと”が揃ってこその資料館
その場が存在し続けることの価値と意味

◇語り継ぐ《満蒙開拓》の歴史
:資料を集めて、証言を記録、不都合な史実も伝える

一般社団法人満蒙開拓平和記念館 専務理事 寺沢秀文
×
高津隆

国策・満蒙開拓、全国から約27万人が渡満
長野は全国最多の開拓民を送出、県内は飯田・下伊那が最多

満蒙開拓に特化した平和記念館の建設
完成まで約8年、強い思いに支えられて

資料、記録、証言映像を多数収集、展示
「満蒙開拓とは何だったのか」を考える

「不都合な史実」ゆえに
正面から向き合おうとしなかった満蒙開拓

満蒙開拓の事実に迫り、「パンドラの箱」を開ける
歴史に最後まで向き合う覚悟が必要

知るべきを知り、学ぶべきを学ぶ
「おかしい」と思う感性、想像力の大切さ

資料を残し、記憶を伝えて、後に続く人を育てる
負の遺産を正の遺産に転換することを願って

満蒙開拓と平和、身近な言葉で紡いでいく
学校教育だけでなく、親子の会話の中でも

◇被爆体験者”伝承者”、記憶を語り継ぐ役割とその責任
アクションを起こすきっかけをつくる、それが私の使命

「被爆体験伝承者」養成事業第1期生 保田麻友
×
フリーライター 藤田憲子

3年間かけて伝承者を養成する
被爆者の体験を継承する、広島市の取り組み

身内だけでなく身近に多くの被爆者がいる広島
ここで学べるものはたくさんある

被爆体験や講和を引き継ぐことだけが
伝承者に課せられた課題ではない

戦争を経験しない者が戦争を伝えていく難しさ

証言者が退場したとき、真価を問われる伝承者
子どもだけでなく、自分の同世代にも伝えたい

伝承者として為すべきことを模索し続ける日々

問題解決に向けて、全国の伝承者と連携していく

■異色対論■

◇記憶と記録を受け継ぎ、”あの日、あのとき”を伝える
私たちが”戦争とアーカイブズ”に向き合う理由(わけ)

株式会社データ・キーピング・サービス 常務執行役員 渡邊健
×
公益財団法人政治経済研究所付属東京大空襲・
戦災資料センター 主任研究員 山本唯人

戦争体験を繋ぐ役割を負った我々の世代
あの日あのときを知らないからこそ

阪神大震災、東日本大震災、
戦争を考える大きなきっかけになった

開かれた社会とのコミュニケーションに果たす
アーカイブズの可能性

異質な存在としての市民目線で考えるアーカイブズ

「戦争とアーカイブズ」という思想の否定
公文書の世界は戦争のテーマに背を向けてきた

民間だからこそできる社会への発信
博物館・アーカイブズの可能性

記憶の伝承、”語るべき”論の難しさ
文字化された記録は多く、問題はそれを受け止めること

受け手にどう共感してもらうか、その感性をどう育むか
教育の現場としてのアーカイブズ

日本ではまだ理解されないアーカイブズの役割
弱いアーカイブズからのメッセージ発信

高齢化の進む語り部たちの背後で
代わって語る役割を引き受ける若者の存在

歴史、時代、個人的体験をどう記録し、伝えていくか
結論の提示でなく、思考のプロセスをサポートする

◇~父から娘への伝言~
父の生きたあの時代、私が生きるこの時代
:世代を越えて語り継ぐ、仕事のこと、家族のこと

ゴルフダイジェスト社 主幹 中村信隆
×
小学館 児童・学習編集局『幼稚園』編集部 野田真菜

自立目指しても保護される、父と娘の関係性
父の背中を見て、娘は、早く大人になろう

子ども向けの会話なく、いきなり「俺の時代は…」
反発するしかなかった娘、暴れる心が原動力に

珍しく話の合う父娘、雑誌の編集は面白い
しかし、本をつくりたいなら、まず本を壊せ

どれだけ執念を持ち、徹底して考え続けるか
『WASIMO』、親子を近づける絶妙の崩れたバランス

本はその人の精神の歴史だ、ということ
気付きの数がキャリア、30代のベテランはいる

情緒を自分の中に確立し、ひとり、幸せの局面を味わう
父と娘が感応し合う瞬間、少ないからこそ実感できる

◇~作品を見る、著作で語る~
記憶に迫り、記録と資料をどう読み解くか

作家、前東京都知事 猪瀬直樹
×
フリージャーナリスト 岩瀬達哉

新国立競技場とエンブレム、その曖昧な事案処理、
『昭和16年夏の敗戦』のときと全く変わっていない

昭和16年、開戦前には分かっていた敗戦
理性で導かれた客観データ、資料による結論を無視

93歳、元企画院総裁、A級戦犯に直接取材
強烈な記憶は消えず、リアルな歴史証言に迫る

『ドキュメント パナソニック人事抗争史』
都合の良い条件を捻り出し、都合の良い結果を期待

先見性に富んだ戦略、画期的なイノベーション
しかし感情が理性を追いやれば、経営は危うくなる

東京オリンピック・パラリンピック招致、
情報を徹底的に収集、共有し、戦略を練り上げる

『東條英機 処刑の日:アメリカが天皇明仁に刻んだ「死の暗号」』
戦後日本の再軍備、記録資料からひも解くエピソード

『戦争・天皇・国家 近代化150年を問いなおす』
1年間、ディズニーランドで過ごしてきた日本人

SNS時代を考える象徴的な出来事
『救出 3・11気仙沼 公民館に取り残された446人』

歴史認識を深め、歴史に自分を重ねる発想がない
観察者は外から見るが、当事者は内からの記憶を書き留める

■特別論稿■

◇クリオはいかにして戦争を伝えるか?
:ボスニアの戦後20周年を記念して

東洋英和女学院大学 専任講師 町田小織

プロローグ
1 当事者もしくは外交官の声
2 観察者もしくは外国人の声
3 記憶、メディア、歴史
3-1 記憶:文学が伝える旧ユーゴスラヴィア諸国の過去
3-2 メディア:旧ユーゴスラヴィア内戦・紛争を伝える映像
3-3 歴史:旧ユーゴスラヴィア諸国の歴史教育
エピローグ

◇記憶の声、記録の音:声の継承、音の保存

学習院大学大学院人文科学研究科
アーカイブズ学専攻博士後期課程在籍 宇野淳子

はじめに:ことばとして思いを受け取る
思いを込めた記録にふれる:時を超えた声の記録
日々の「思い」を音声で記録する:思いをつなげる最初のステップとは?
録音
整理・保管
反訳(文字化)
残された「思い」を活かす:音声記録の活用の可能性
おわりに:あなたの思いも、未来に伝わる

■Talk Session 白熱メッセージ■
記憶から記録へ:訊ねて、聴いて、紡いで、残して、伝えること

企業史料協議会理事、元花王ミュージアム・資料室長 上田和夫
企業文書館学芸員、アーキビスト 中臺綾子
公立博物館学芸員、アーキビスト 佐藤正三郎
公益財団法人渋沢栄一記念財団事業部情報資源センター 松崎裕子

アーカイブズへの通り道
父親の記憶、老舗の記録、日本史研究から

記憶を語れば、記録と資料が残る
記録を消せば、全てが消える

沖縄・伊江島、”記録の人”が集めて、残した資料
書き込みぎっしり、重たい思いの詰まる手稿文書に

戦時の記録、祖母の記憶があってこそ
オーラルヒストリーは聞き手と一緒につくられる

公文書にはない”生の声”を聞く
聞き書きすれば、生きた記録ができる

オーラルヒストリーを歴史資料とするために
第三者が検証可能な生データの保存も必要

積極的に資料を作るアーキビストとしての仕事
足りない記録をオーラルヒストリーが補完する

オーラルヒストリーで全てを語ることの限界
語る人、聞く人がいて、アーキビストが情報化する

やがて消える記録を継承することの難しさ
時代の中で変容する日常性、どう伝え、残すのか

原体験を持つ人、持たない人、落差は歴然
繰り返し、記録を見返すことが必要

直接的体験、不在の時代を生きるには
大文字の歴史に個人の歴史を重ねて感じる

録音・録画、技術の進化が記録化を進める
技術に頼り過ぎて、記録化への姿勢は安易に

寺子屋講座で町の仕事人の言葉を伝える
資料化されず、埋もれた録音、録画の記録

家族の記録をひも解く、身近なアーカイブズ
会社史の原資料、一般公開には高いハードル

音声、映像記録はリアルな生資料
確実性の高い”書き起こし”、情報整理と資料管理がカギ

■Muse Special Guest 小谷充志さん■
記憶が消えても、記録は残る:この道4半世紀、思えば遠くに来たものだ

株式会社出版文化社アーカイブズ研究所所長、
記録管理学会元会長 小谷充志さん

大連生まれの青島育ち、8月15日は再び大連で
終戦でガラリと変わった環境

「母はたいしたものだ」、後になって知る母の恩
引き揚げて、たどり着いた神戸も港町

少年時代、身近にあった活字、読書に親しむ
やがて映画にはまり、音楽、美術、古都巡りへ

OA企業のビジネスマンに
経験重ね、人生を変えた異動

記録管理、レコードマネジメントの世界へ
渡米して知った彼我の大差に衝撃受ける

記録管理の世界大会で自ら発表
アーカイブズ分野とも深い親交

記録管理とアーカイブズを繋ぐために
現用、非現用のブリッジを強化

記録管理、アーカイブズの発展を阻害する要因
“今”中心主義、無責任体質、不合理な意思決定過程

電子時代の記録管理はさらに困難、多い課題
情報はどこに? 全てをハイブリッドで管理

後に続く人たちへの伝言
原点にさかのぼり、目的、理念を忘れず、広い視野を!

■編集後記■

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入手ご希望の方は、電話(03-5919-9600)かメール(shiryokan@tdb.co.jp)にて帝国データバンク史料館までお問合せください。

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わたくしは今号では座談会と巻末インタビューに参加させていただきました。よろしければご一読ください。
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