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JIIMA/ECM委員会「ECMサミット2016-パネルディスカッション ワークスタイル変革とECM」(2016年10月20日)に参加


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JIIMA ECM2016

公益社団法人日本文書情報マネジメント協会(JIIMA)主催の「eドキュメントジャパン2016/54th文書情報マネジメントショウ」「eドキュメントフォーラム」に行ってきました。

以下にまとめたのは、2日目(10/20)に開催されたJIIMA ECM(統合文書マネジメント)委員会主催フォーラム「【ECMサミット】ワークスタイル変革とECM 」のレポートです。司会・ナビゲータはECM委員会委員長で株式会社イージフ副社長CTOの石井昭紀さん。石井さんには松崎も編訳者として関わった『レコード・マネジメント・ハンドブック:記録管理・アーカイブズ管理のための』に関する文献紹介国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)『情報管理』Vol. 59 (2016) No. 7にご執筆いただきました。

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最初にナビゲータの石井氏より、ECM委員会に関する簡単な紹介がありました。ECM委員会とはJIIMAのナレッジ系委員会で年に2回、競合ベンダーによるプレゼンテーションの場としてECMサミットを行っています。さらに、今回のテーマ「ワークスタイル変革=働き方変革」について、ワークスタイルとはそもそも何か、なぜ変革する必要があるのかというお話がありました。それによると近年ワークスタイル変革の必要が言われている理由の一つは、社会の要請。例として「働き方改革に関する総理発言・閣議決定資料」(2016年9月、内閣官房働き方改革実現推進室)が上げられていました。世の中で提示されている解決策、展望にはテレワーク、リモートワークがあります。

関連するキーワードは

テレワーク支援
会議システム
ペーパーレス
グループウェア
オフィスデザイン

などです。石井さんによると「テレワークやリモートワークは新しい話題ではない、なぜそれが今また求められているのかというと、

・近年の技術的変化。コミュニケーションのデジタル化
・モバイルを含めた通信環境の整備、デジタルデータは場所に依存しない
・ボーンデジタルな情報の増加、業務に必要な情報はどんどんデジタルになっている

といった最近の急激な環境変化がある」からということでした。

これに続いて、ECMを扱うベンダー4社のパネリスト(日本IBMの三ツ矢さん、ハイランドソフトウェアの金井さん、オープンテキストの市野郷さん、富士通総研の小林さん)から、

◎ワークスタイル変革をどうとらえるのか
◎成功要因
◎利便性
◎失敗例、注意点

に関してお話がありました。下のメモは松崎が聞き取った内容です(各発言者名は省略)。

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◆パネルディスカッション「ワークスタイル変革とECM」◆

◎ワークスタイル変革をどうとらえるのか

・(自己紹介)ECM実現のためのソフトウェアの営業、開発に携わる。会社としてのグローバルなミッションWork place as a mission がある。それは「生産性向上」「能力向上:トップタレントを引き留める」「場所の提供」。これらの実現のためのツールとしてITがある。

・会社がやってきたこととして、柔軟な働き方の導入がある。「働く時間の柔軟性」「働く場所の柔軟性」。オフィスには固定した席をもたずに、キャビネットだけ。2009年ぐらいからホームオフィスも導入している。

・コンサルタントや営業など顧客の近くで作業する社員はモバイルワーカーで、新橋や品川などにサテライトオフィスを持っている。チームミーティング以外はそこで働くことも多い。結果を出してください。

・一定の勤続年数がありある程度信頼できる人は在宅で勤務できる(eワーク、ホームオフィス)。社員全員がオフィスに出勤した場合、全員が座ることのできる席数はない。

・(自己紹介)本社はアメリカ、創業25年。自分は営業、営業推進等に従事。自分自身もテレワークをしている。自宅で仕事。ワーキングマザー。オフィスも必要があれば行くが、基本は家。上司はシンガポールにいる。話すときはメールやチャットなど。

・「ワークスタイル変革」にはいろいろな定義がある。一つの定義はICTの観点を駆使して働くこと。

・ワークスタイル変革は新しいことではない。これまでも議論されてきた。

・これまでの顧客の要求は定型業務の効率化などであった。いまの状況はオフィスで働いているのと同等の生産性を確保すること。

・ワークスタイル変革に関する会社の解釈は「情報の一元的管理」つまり単一のエンタプライズ情報管理プラットフォームで企業内のさまざまな文書情報を管理することと結びついている。「キャプチャ、コンテンツ管理、既存システムとの連携」「単一のセキュアな情報基盤、プラットフォーム上で管理」「ワンプラットフォームの推進」「情報管理基盤の提供」

・ワークスタイル変革とワンプラットフォームの関係は? 「外にいても担当者に連絡しなくてもいい。必要な情報を見たいときに見ることができる。そういうシステムを提供すること」。

・日本だけではなく他国でもワークスタイル変革は必要なのか? アメリカでは10年、15年前から議論されている。自分の会社は多国籍で業務しているので、ある意味で今に限った話ではない。本社のあるアメリカではリモートオフィスなどはずっと前から使われている。

・(自己紹介)会社はカナダに本社がある。全文検索テクノロジーからビジネスを立ち上げた会社。全世界で1億人ぐらいがユーザー。フォーチュン500社のうち90パーセントが利用している。日本国内にグループ会社がある。

・オフィスにいなくてもビジネスができる。

・ワークスタイル変革をECMベンダーとしてどうとらえるか? CEO&CTOは「デジタル・トランスフォーメーションに備える必要がある。ITを使う、ITの浸透によってわれわれの生活をよい方向に変化させていく」、そういうことを言っている。

・日本国内でもAI(人工知能)、VR(バーチャルリアリティ)、IT技術を自社のビジネスモデルに組み込んでいく、そういう変化が起こりつつある。

・デジタルトランスフォーメンションへのドライバーとしては、ワークフォース(従業員)の変化やデジタル世代の顧客の登場がある。ワークフォース変化とは、つまり人材の確保にある。

・デジタルトランスフォーメーションとITの利活用はどう違うのか?

・(自己紹介)会社はメーカーのシンクタンクで自分はコンサルティングを行っている。

・ワークスタイル変革をどうとらえるか?
わかりやすく。特定の業務を変えていく=BPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)
共通の部分を変えていくことがワークスタイル変革
定型的な業務の手順を変えて効率化して、価値を生む=BPR
非定型的な仕事を最適化して、イノベーションを生み出していくことが働き方変革
ホワイトカラーの働き方は非定型的な仕事である。この部分を変えていくことがワークスタイル変革

・グローバルで働いているところからワークスタイル変革が始まったのではないか。

・日本はコンシューマ(消費者)としてのデジタル化が先に進んだ。仕事の仕方のほうの変革は後から。

・ECMのツールを使いこなせないと働き方の変革はできない。ECMはインフラになる。

・コンサルタントの立場はビジョンを作ることとルールをつくる(人事、評価制度、会議の仕方、働く人の意識engagementなどに関わる)。

・東京証券取引所は経済産業省とともに健康経営銘柄を指定している。そのほかに健康経営優良法人ホワイト500という制度も立ちあがっている。ワークスタイル変革のポテンシャルを図る指標などもある。

◎成功要因は?

・フリーアドレス、インフラ、モバイル

・意識改革が一番強力な要因

・ワークスタイルのオンデマンド変革。自分の会社は日本では在宅が4%、世界平均は12%

・顧客と接触する職種の場合、数字が上がっていないでオフィスにいると物理的にオフィスを使えないようにする、というようなこともありえる。この部分は心の健康問題とも関連してくる。

・自社の場合、社内オフィスに固定席のある社員は日本法人30%、全世界平均9%。アメリカはホームオフィスが中心。

・ワークスタイル変革を成功させるにはワンプラットフォーム情報基盤が必要。昔はペーパーレスが言われていたが、いまは精神的な労働環境の整備に重点がある。そのためににはツールが必要。ワークスタイル変革が言われる要因の一つには、ECMの利用がある。

・オフィスの外にいても必要な情報にアクセスできるようにして生産性向上。

・顧客1万5000社からの問い合わせを、世界各国のサポートチームが記録する。そして問題解決策を提示する。

・日々発生するさまざまな問題を一元的に管理し、案件にかかわる情報を360度すべて把握する。

・一つの例であるが、アメリカで問題発生というケースで、ツールを使って東京のスタッフが過去の情報を検索する。そういうケースマネジメントがある。

・次世代ECMは? 例えばEFSS(Enterprise File Synchronization and Sharing)などがある。

・現在の文書管理の目的は”ペーパーレスの実現”からもう一段先に行っている。

・以前のECMに求められていた目的は、「ペーパーレス」「コスト削減」(「物理スペースの削減によるコスト削減」)。今は紙にとらわれないことが働き方変革につながる。

・成功要因はビジネスモデルの変化にある(企業のあり方、今の仕事の生産性をどのように高めていくか)。

・ITの利活用とデジタルトランスフォーメーションはどう違うのか? 東京証券取引所は経済産業省とともに上場会社のIT経営銘柄を決めている(ROI8パーセント以上の会社)。ITを使っていまのビジネスモデルをよりよいものにしていくのがビジネストランスフォーメーション。

・コンサルの現場では「成功とは何か」を一番初めに定義する。(1)(2)は共通。ビジネスとその変革の基盤。本当に定着するかが(3)。
(1)電子、デジタルで仕事を行う環境をつくり、新しいコミュニケーションによる出会いによって、新しいイノベーションを創出する。
(2)会社の仕組みと制度で情報を守る。
(3)使いやすさ、利便性があるかどうか。現場の人に実感してもらう。不平不満を吸収する仕組みがあるか。

◎利便性に関して

・自社ではECMは営業ではあまり大きく活用されていなかったが、昨年他社と提携してセキュリティが充実した。また提携先の製品は使い勝手がよい。

・ECMを情報のハブとして利用し生産性を高めている。例えばCRM(customer relationship management)をハブとして利用し、さまざまな業務に利用することによって利便性が生まれる。

・例えば請求書・契約書を単に管理するだけでは使いづらい。コンテンツを業務プロセスに紐づける(コンテキスト)。するとそれによって価値が生まれる。業務プロセスとつなげることは利便性を生む。

・機械ができることと人ができることをはっきりさせる。例えば領収書電子化のみならず、請求書をスキャンしたらそこから自動的に流れていくような使い方が最近のECM。

・今は非定型の業務での文書作成も作成時点から作成からデジタル。アイデアが生まれた時から全部デジタル。そういうツールの管理が必要。さまざまな業務プロセスをうまく連動しながら、うまくつなげることが利便性をもたらす。

◎失敗例、注意点

・組織替えなどあったりしたときは、リモートワークばかりでなく、上長に顔を見せるなど人間的な接触も大事。心情的なところを考慮したほうがいいときもある。

・ECMはツールなので、それだけ導入しても成功にはつながらない。ワークスタイル変革は会社にいる人もリモートの人と同じように、全社として取り組むべきこと。そのためにはトップのコミットメントが大事。

・一気に何かを変えるのは難しい。明確な課題をもっているところを優先して、成功を実感しながら進めることが大切。働き方に対するカルチャーを改革していく

・失敗例には「タブレットを全社的に導入したが活用方法がわからない」というような例がある。新しいものを配るとワークスタイル変革のような気になるが、ちょっと違う。ワークスタイル変革とは人材確保。ECMだけでは難しい。

・オフィスでないとできないこと、外でないとできないこと、家でもできること、そういうところを考えることが大切。自社ではソフトウェアでできることを考えており、今回展示会にブースを出している。ECMでワークスタイルを変えていくのをデモしている。

・トップダウンで大金でシステムを導入して使われないのが失敗例。現場に寄り添うことが重要。グループ会社と一緒になって、ビジョンの設定をデザインしている。そこにどういう人を引き込むかを考えている。現場で普及してリーダーになってもらう。


現用記録の管理からアーカイブズの管理を統合的に考えるレコードキーピングは記録文書の作成段階がスタートです。現用記録文書の管理はどうなっているのか、とくにITの観点からは何が問題になっているのかを勉強しようと参加したのですが、、、 むしろアーカイブズの側の課題を認識することになりました。テレワークやリモートワークが普通となった場合、これまでフェイス・トゥ・フェイスを前提として考えられていたやり方というのは有効でなくなってしまうかもしれません。自社の歴史に関わるコンテンツは最近は多くの企業で社内イントラネットに掲載されることが増えてきていますが、モバイルが基本の働き方になった場合、デバイスによる最適化のようなことにもっと注意を向ける必要があるかもしれません。さらに、業務への利用(顧客に対する自社の歴史・ヘリテージ関係のプレゼン)を考えてみた場合、アーカイブズ資料やコンテンツを管理するシステムを、全体のシステムのサブシステムとしてハブとなるシステムに結びつけたほうがよい、というような議論ができるかもしれません。

パネルディスカッションに対するわたしの感想は、ECM専門の方々の感想とはだいぶ異なった感想であると思われます。しかし、ワークスタイルの話はこれまでアーカイブズ関係の会合で話題になったことはなかったので、非常に興味深いものでした。

後日、JIIMA ECM委員会のポータルサイトに当日の資料が掲載されるというアナウンスがありました。http://www.ecm-portal.jp/