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Title: The Evaluation and Preservation of Business Archives
Category: Research Article
Journal: American Archivist
Issue: Volume 1, Number 4 / October 1938
Author: Oliver W. Holmes
http://archivists.metapress.com/content/p2x3r56677tj4423/fulltext.pdf
著者のオリバー・W・ホームズはミネソタ州出身。1922年Carleton College卒業、1956年コロンビア大学にて博士号取得。1935年の設立時にNARAに採用される。SAAの設立メンバー。1958年SAAフェロー、1958-59年SAA会長。1972年NARA退職。
この論文では次のようなことを述べています。
歴史家は記録の評価選別に反対するが、記録が非現用となり次第直ちに後世に残すべきものを選別するのは、経済の観点からも記録の原秩序保存の観点からも必要なことである。放置されることによって散逸したり、もともとの秩序が失われた場合、これを復元するには多くのコストがかかる。
人々の暮らしにとってワシントンとウォールストリートは二つの権力の中心地である。民主主義国アメリカにおいては政治に関する記録は広く国民にもたらされるべきであるという考えから印刷されて普及が図られる。しかしビジネスは異なる。ビジネスにおいては記録は関係者のみにとどめ置かれるのがふつうである。その記録も刊行物ではなく、手稿記録であろう。
しかし投資家、従業員、消費者にとって、さまざまな意思決定を行うにあたって企業の記録は欠かせない。
大企業における記録のリテンションと廃棄スケジュールについて特別注意を払う必要がある。いったんスケジュールが出来上がると機械的に記録の廃棄が行われる。州際通商委員会(Interstate Commerce Commission)では蒸気鉄道、電気鉄道、運送会社、水運会社、パイプライン会社、寝台列車会社、電報・電話・電信会社のために古い記録の廃棄規則を公にした。全国電灯協会は1923年に電力会社のために推奨される廃棄コードを発表、全国火災保護協会は「記録の保護」Protection of Records (1935) という貴重なパンフレットを発行している。
不要な記録は企業にとっても歴史家にとっても大体は同じであるが、必ずしも見解が一致しない場合もある。例えば、企業は歴史家よりも通信関係のファイルや経営上の覚書を廃棄するのに躊躇しないけれども、会計記録に関しては非常によく保存している。後者は歴史家にとっては必ずしも必要とは思えない場合もある。 企業に記録保存の大切さを説くために、経営史協会は企業向けに1937年10月、The Preservation of Business Recordsというパンフレットを発行した。
企業は成功するとばかりは限らない。失敗した企業の記録の保存の問題もある。また中小企業の記録の保存は大企業のようにはいかない。こういった企業の記録の整理を経済学や経営学専攻の大学院生にまかせるというアイデアも、ハーバード大学の経営史協会コレクションづくりのひとつの要因である。地域や産業といった単位で共同保存を行ったり、政府への納税者に関する記録という観点から連邦政府の保存機関に記録を委ねるという考え方もあろう。
いずれの場合も、評価選別を賢く行う(intelligent selection)ことが重要である。
いっぽう、SAAはイギリスのCPBA(Council for the Preservation of Business Archives, BACの旧名称、1934年設立)のような役割を果たすことを考えてもよいだろう。CPBAでは記録保存の相談にのったり、保存に適切な外部機関を紹介するといった活動を行っている。CPBAの報告には「企業記録に関する情報は待っていても得られない、カウンシル側が熱心に勤勉に情報収集にあたる必要がある。企業の記録の所有者からの自発的な申し出というのはめったにない」とあり、まさにその通りである。
この論文では企業記録の評価基準に具体的に踏み込むというよりは、保存の意義と企業記録をとりまく状況、保存に向けた考え方が述べられています。が、保存にあたって評価選別が絶対に必要である、という点は最初から最後まで一貫しています。
参考になるデータとして次のようなものが含まれていました。
- 1870年以降業務の単位が拡大する。
- 1890年以前は企業記録はすべて製本されて保存され、索引が別に作成されてこれも製本された。
- 1890年以降、カード索引が用いられるようになった。
- 1900年以降、記録自体がカード化されるようになった。
- 1897年ころからカーボンコピーと縦型キャビネットが利用されるようになった。その数年後ルーズリーフバインダーが登場した。
大企業におけるファイリング担当者を file specialists who are the practical archivists of the business world と記述している部分があり、ファイリング担当者が実質的にはアーキビストの役割を果たしているという認識を確認することができます。
[参考]
Title: Oliver W. Holmes
Category: In Memoriam
Journal: American Archivist
Issue: Volume 45, Number 2 / Spring 1982
Author: Walter Rundell, Jr.
http://archivists.metapress.com/content/y54424166452k812/fulltext.pdf
