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ブログを読んでいただいた方から、「アーカイブズ」と「デジタルアーカイブ」の関係について、完結明瞭に、歴史的背景と歩み、課題が整理されている文献があります、とご教示いただきました。下記の文献です。

 

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著者:後藤真

タイトル:アーカイブズからデジタル・アーカイブへ:「デジタルアーカイブ」とアーカイブズの邂逅
(NPO知的資源イニシアティブ『アーカイブのつくりかた:構築と活用入門』勉誠出版、2012年、所収)

出版者ウェブページ:
http://bensei.jp/index.php?main_page=product_book_info&products_id=100175

 

[目次]

「デジタルアーカイブ」という語が生み出したもの

アーカイブズの「登場」

デジタルアーカイブとアーカイブズの「ねじれ」がもたらしたもの

アーカイブズとデジタル・アーカイブズの「邂逅」

アーカイブズの思想が作る「デジタル・アーカイブ」・デジタルが救う「アーカイブズ」

公開と非公開のデジタルデータ

見えている文化財がプレ文化資源を引き出す

深まるデジタル・アーカイブ 広がるアーカイブズ

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先日目次をご紹介した『これからのアーキビスト』(NPO知的資源イニシアティブ編、勉誠出版、2014年)所収の「博物館・美術館にデジタル・アーキビストは必要か?」で、阿児雄之氏は後藤氏の次の部分を引用しています。

「デジタル・アーカイブには、単純なギャラリーではなく、文化資源とそのあり方に基礎づけられた、新たなアーカイブの形を模索すべきであろう。基礎のない、コンテンツが浮遊しただけのものをデジタル・アーカイブと銘打つのは、『歴史学なき歴史』のデジタル版を再生産し続けるだけにすぎない。アーカイブズに土台を持ったデジタル・アーカイブの作成が必要である」(後藤、114ページ)

この問題意識を受けて、阿児氏は、

「私は博物館・美術館にアーキビストならびにアーキビスト的役割は必要であると考えるが、デジタル・アーキビストという人物像を明確に描くことができない。加えて、後藤氏も述べられているが、単なる文化資源をデジタル化したコンテンツをデジタル・アーカイブと呼び、それに従事する人材がデジタル・アーキビストであると社会に認識されてしまうと、アーキビストの土台なきデジタル・アーキビストが登場してしまう危険性も孕んでいる」(阿児、22ページ)

と述べて、「デジタルアーカイブ」を進める中で、「アーキビストの土台なきデジタル・アーキビスト」登場を懸念しています。阿児氏は結論部分で、

「博物館・美術館におけるデジタル・アーキビストとは、あくまでもアーキビストに包含される概念であり」(阿児、29ページ)との考えを示しています。

「これからのアーキビスト」は、「アーカイブズ」とそれを扱う「アーキビスト」の職務を土台にしたもの、という考え方に私も共感をおぼえます。

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