日本アーカイブズ学会の2024年度大会、SIGフォーラム

委員を務めている日本アーカイブズ学会の2024年度大会が4月20日(土)と21日(日)の両日、学習院大学で開催されます。オンライン(Zoom)を併用したハイブリッド形式です。

SIGに関心を持つ方々の交流のための場「SIGフォーラム」を今年度より開設します。協賛会員出展と同じ401教室です。

チラシ

日本アーカイブズ学会2024年度大会開催概要および参加登録について

企業史料協議会第9回ビジネスアーカイブズの日(2020年11月6日)

企業史料協議会主催、第9回ビジネスアーカイブズの日シンポジウム「《アーカイブズでつながるコミュニティ》アーカイブズ・コミュニティを目指して」にて、基調講演とパネルディスカッションのモデレータを担当します。
http://www.baa.gr.jp/syousai.asp?id=646
http://www.baa.gr.jp/

日 時:2020年11月6日(金) 14:10~17:05
場 所:Zoom
定 員:120名(先着順、11月4日締め切り)
料 金:会員無料、一般一名1000円
申 込:事務局 info@baa.gr.jp


<プログラム>

【開会挨拶】14:10~14:20
 石原 邦夫 
 東京海上日動火災保険株式会社相談役/企業史料協議会会長

【基調講演】14:20~14:50
 松崎 裕子
 公益財団法人渋沢栄一記念財団情報資源センター 企業史料プロジェクト担当/企業史料協議会理事

【パネルディスカッション】15:00~17:00
 モデレータ 
 松崎 裕子
 
 パネリスト 
 樋川 裕二
 グンゼ株式会社 綾部本社総務課課長 /グンゼ博物苑前苑長
 
 豊嶋 朋子
 株式会社アンデルセン・パン生活文化研究所理事/広報室 社史編纂・史資料チームリーダー

中野 寛政
 TOTO株式会社 TOTOミュージアム館長

【閉会挨拶】17:00~17:05
 阿部 武司
 国士舘大学政経学部教授/企業史料協議会副会長

総合司会
 野秋 誠治
 企業史料協議会理事

詳しくは企業史料協議会サイトをご覧ください。
http://www.baa.gr.jp/syousai.asp?id=646
http://www.baa.gr.jp/

柳沢芙美子「福井県文書館の行政組織上の位置付けと業務連携」(2019年12月)

公文書管理法第1条にあるように、アーカイブズには二つの性質がある。ひとつは組織の行政管理・経営管理あるいは法務方面でアカウンタビリティを担保するためのエビデンス(証拠)であり、もう一つは知的資源(文化資源あるいは情報資源など)であるということ。

そのため、地方公文書館は首長部局に位置付けられる場合と、教育委員会の下で運営される場合がある。これについては国立公文書館が刊行する「全国公文書館関係資料集」が詳しい。

近年「文化機関」の連携の枠組みの中にアーカイブズを位置付けようとする動きも盛んである。その場合、MLAと呼ばれたりする。Mはミュージアム(博物館、美術館)、Lはライブラリー (図書館)、Aはアーカイブズである。

柳沢芙美子氏によると、都道府県の文書館が教育委員会事務局所管の機関である場合、福井県をのぞくと、公開および文書管理の所管課の事務分掌に文書館が位置づいている例はみられない、という。福井県では文書館が情報公開・文書管理の所管課の事務分掌にも位置づいていることによって、

「文書館が選別した歴史的公文書の移管と収集・搬入、歴史的公文書の利用制限を行う際に、必要に応じて情報公開・法制課を通して現課の意見を参考にしたり、現用公文書の情報公開時の事例を参照しながら審査したりする際の協力関係の裏付となっている」「現用公文書の管理に関する例規である福井県訓令『福井県文書規程』改正の際には、文書館がその議論に加わる根拠にもなっていた」

とのことである。

柳沢芙美子「福井県文書館の行政組織上の位置付けと業務連携」(『北陸史学』68号、2019.12、68-69ページ)

図書館や博物館は教育委員館所管の場合が多いと思う。文書館がこれらとの連携を進めつつも、親組織の文書業務とのつながりを維持し、文書に関わる業務をよりよく改善していくためには、文書管理関係の所管課の事務分掌にも文書館が位置づけられるよう、注意していくことが必要である。このことを上記論文から学んだ。

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アイキャッチ画像は、

『越山若水』1910年収載。加藤竹雄家文書A0052-01441 福井県文書館蔵

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「原課」ということば(2020年7月)

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アーカイブズ、アーカイブズ学で使われる基本的な概念・用語の話のなかで、「出所」(provenance)と「原課」の違いは何か、という質問を受けました。

「出所」とは、provenanceの翻訳であり、国際アーカイブズ評議会アーカイブズ教育部会が編纂した多言語によるアーカイブズ用語集の日本語版によると、

「provenance 記録センター又はアーカイブズ機関に移管される以前に、業務遂行の中で記録を作成、蓄積/維持し、使用した組織又は個人。」

です。「その文書のoriginはどこか、そのように考えてね」という説明も行いました。別の回の公文書管理に関する話の中で、現用、非現用、公文書館への「移管」のところで、日本では「原課」という言葉もよく使われるという話をしたところ、上のような質問が出た次第です。

「原課」–これは、日本国語大辞典、大漢和辞典にも、地方自治百科大辞典にもない。Wikipedia日本語版で「官房」を引くと、次のような説明があります。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AE%98%E6%88%BF

「なお、官房を除く各局、各部の建制順上の筆頭にある課(筆頭課)は、各局における人事・文書・会計等の総括管理を掌っており、各局における官房の機能を有する。官房、筆頭課に対して、実際の行政事務を掌る各局、各課は「原局」(げんきょく)、「原課」(げんか)と称される。」
(この部分出典の注なし)

あくまで「官房」と対になった呼称のようです。「官房学」はドイツのカメラールヴィッセンシャフトから。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AE%98%E6%88%BF%E5%AD%A6

「官房」は国家行政組織法、内閣府設置法には出現する一方、原局、原課はともにゼロ。公文書管理法には官房も原課も出てきません。

大森彌『官のシステム』(東大出版会、2006)、東田親司『現代行政と行政改革』(芦書房、2004年)など行政学の文献ではどのように説明されているのか確認してみたところ、後者が第6章「府省内組織とその役割」のなかの「中二階ポストと課レベル組織−課レベルポスト」の項で次のように述べています。

「同じ本省の課長でも筆頭は官房課長であり、次に局の筆頭課長、その次に局の原課の課長という順番で年次的にも配分されている。I種採用者の昇進ポストも最初に課長になるのは原局課長で、これを2〜3箇所勤めて将来性を見込まれれば局の筆頭課長となりさらに官房課長になるコースを歩む。他方、原局課長時代の評価が不十分等で第1グループに入らない場合には、出先機関であるブロック機関の部長や府県単位機関の長に転出していくケースが多い。」(59ページ)

著者自身は行政管理庁に入庁したあと、総務庁行政監察局長を経て退官、本書執筆時点では大東文化大教授。これ以前のページに「原局」「原課」の説明はないので、官僚にとってはあまりにも当たり前で、説明するようなものではないのかもしれません。Wikipediaに典拠資料がないのもこのあたりに由来するのでしょう。

一方、Ciniiアーティクルで「原課」を全文検索すると、203件ヒットします(2020年7月12日)。

すべてがアーカイブズ学関係ではありませんが、地方自治体における文書管理関係の論文がいくつかあります(嶋田 典人「地域記録の作成・保存・利活用 : 法整備と組織体制・運営」など)。ほかに上川陽子元法務大臣の講演録にも1箇所登場します。

国の機関に勤務している人に聞いたところ、「原課」とは「官房」(あるいは「総務」など省庁内の秘書的な部門)以外を指す言葉で、省庁の職員なら100%知っているだろうということでした。

そういうわけで、国レベルの行政機関と地方公共団体では「原課」という言葉の意味は異なっているようです。そこで、全国歴史資料保存利用機関連絡協議会(全史料協)が発足1976年(昭和51年)から委員会体制に移行する前年の1994年(平成6年)度まで同協議会の事務局を担当した埼玉県立文書館の主任専門員の太田富康氏(館内で全史料協事務局を担当したのは1989年(平成1年)度から1993年(平成5年度)、同氏は今年度のアーキビスト認証委員会委員)にうかがってみました。

太田氏は今年3月で通算37年間の埼玉県職員生活を送られています。以下のように説明をうけました。

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「原課は「当該文書等に係る事案を所掌する課及び所」という意味で使い、それで混乱なく通用してきました。それは県での仕事でも全史料協等のアーカイブズ界の場においても、です。たとえば、当館は永年保存文書を現用のまま「管理委任」という形で預かっています。

文書の流れは、原課→文書課→文書館、です。

それらの文書のうち、情報公開条例上非公開となっているものを見たい、と言われたときに「その判断、権限は原課にあります」とか「原課に聞いて下さい」というように使います。あくまで「原課」は文書課でも部局の筆頭課でもなく文書を発生させた元の課を指して使ってきました。

ただ、これはいわゆる「俗語」と思っており(埼玉県の法規DBで検索しても出てきません)、正式な場や文章、講師などでは「主務課」を使ってきました。

全国的にこの用語がどれだけ普遍的かは確認したことはありませんが、埼玉県の文書規則ではそのように定義があり(前述の「原課」の意味はその引用です)、埼玉県地域史料保存活用連絡協議会(埼史協)の研究会でも市町村の人から同じ使い方と教えて貰い、埼史協の文献でもこの「主務課」を使いました。

なお、「主管課」というのは、埼玉県の行政組織規則では各部の筆頭課(とりまとめ課)をいいます。企画財政部では企画総務課、福祉部では福祉政策課などがそうです。

ただ、私は「文書主管課」「文書管理主管課」というような使い方もよくしていますし、よく使われていると思います。

「部」という組織のとりまとめではないですが、文書事務という業務の県(知事部局)全体のとりまとめ課、すなわち、例規で言えば、公文書管理法や文書管理規則を主管する課、というような意味合いで、です。

——–

とのことでした。太田氏のご説明にあるように、これは「俗語」なのでしょう。アーカイブズや公文書管理の話に初めて接した人、とくに役所外の人々には「原課」というのはよくわからない、疑問に思う言葉の一つかもしれません。じっさい自分がそのような質問を受けたのでここに記録しておきたいと思いました。

なお、「出所」に関しても、その意味合いについていろいろご教示いただいたので、別の記事として後ほどまとめられたら、と思っています。

【参考】

Multilingual Archival Terminology
The section on Archival Education (SAE) | 13 March 2012
International Council on Archives
https://www.ica.org/en/online-resource-centre/multilingual-archival-terminology

Multilingual Archival Terminology
http://www.ciscra.org/mat/

日本語
Multilingual Archival Terminology
http://www.ciscra.org/mat/mat/termlist/l/Japanese

「出所」
Multilingual Archival Terminology
http://www.ciscra.org/mat/mat/term/4007

全国歴史資料保存利用機関連絡協議会(全史料協)
http://www.jsai.jp/

新井浩文「埼玉県地域史料保存活用連絡協議会(埼史協)40年のあゆみ」
http://www.archives.go.jp/publication/archives/no057/4156

埼玉県立文書館「埼玉県地域史料保存活用連絡協議会(埼史協)」
https://monjo.spec.ed.jp/%E5%9F%BC%E7%8E%89%E7%9C%8C%E5%9C%B0%E5%9F%9F%E5%8F%B2%E6%96%99%E4%BF%9D%E5%AD%98%E6%B4%BB%E7%94%A8%E9%80%A3%E7%B5%A1%E5%8D%94%E8%AD%B0%E4%BC%9A

国立公文書館つくば分館にて(2020年6月24日)

同上

同上

 

国立公文書館「アーキビストの認証」申請・認証スケジュールの公示(2020年6月)

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国立公文書館が進めてきたアーキビストの認証制度が始まります。申請スケジュールについて、同館ウェブサイトで公示されています。
http://www.archives.go.jp/ninsho/index.html

【2020年度の申請スケジュール】

申請受付:2020年9月1日(火)~9月30日(水) ※消印有効
◎10月1日(木)以降の消印のものは、受け付けない。
審査期間:2020年2年10~12月
審査結果通知:2020年12月15日(火)まで(郵送及びメール)
認証:2021年1月

『令和2年度 認証アーキビスト 申請の手引き』(2020年6月 国立公文書館)
http://www.archives.go.jp/ninsho/download/005_shinsei_tebiki.pdf

申請書様式 
PDF   
http://www.archives.go.jp/ninsho/download/006_2020yoshiki.pdf

Excel
http://www.archives.go.jp/ninsho/download/006_2020yoshiki.xlsx

「アーキビストの職務基準書」
http://www.archives.go.jp/about/report/pdf/syokumukijunsyo.pdf

詳しくは国立公文書館のページを確認してください。
http://www.archives.go.jp/ninsho/index.html

*国立公文書館ニュース第22号(2020年6月)
加藤丈夫館長と高埜利彦アーキビスト認証委員会委員長のインタビュー記事「公文書等の管理を支えるスペシャリスト-認証アーキビストの誕生で変わること-」が掲載されています。
http://www.archives.go.jp/naj_news/22/special.html

 

 

尼崎市の文書館専門職(正規職員)採用試験情報(2020年1月)

尼崎市の文書館専門職員(正規職員)採用試験情報です。

受験資格:
昭和54年4月2日以降に生まれた人
学校教育法に定める大学において歴史学またはアーカイブズ学を専攻し卒業した人または令和2年3月までに卒業見込みの人

職種:事務

職務内容:
(1) 尼崎市域の歴史的公文書等、歴史資料の調査・整理・保存・公開事務
(2) 歴史刊行物の調査・編集事務
(3) 窓口市民対応、講座の実施、施設管理運営等、地域史料に関わる業務
(4) 一般行政事務

・将来において、一般行政事務を主とする職場への配置の可能性もあります。

http://www.city.amagasaki.hyogo.jp/shisei/bosyu/syokuin/1019724.html

Web事前申し込みが2020年1月14日(火曜日)から18日(土曜日)、書類郵送が20日(月曜日)までと、たいへん短い応募期間となっています。


大垣市立図書館蔵
寛永12年 摂州尼ケ崎城詳図

この記事タイトル上部のアイキャッチ画像
尼崎市立地域研究資料館所蔵
寛文10年(1670年)頃尼崎城下絵図,南方向(海側)から北側方向の絵図

ISO9000シリーズにおける「文書」と「記録」に関するメモ

記録管理に関する国際標準ISO15489(初版は2001年)はオーストラリアの国家標準AS4390が元になったことはよく知られている。オーストラリアの専門家たちによる解説スライドによると、AS4390は品質マネジメントの国際規格(標準)ISO9000にリンクしているとある。(下記スライド3枚目)

Recordkeeping Standards Adrian Cunningham, Sue McKemmish, David Roberts and Barbara Reed (updated March 2004)
http://www.sims.monash.edu.au/subjects/ims5010/topics/ims5010t2-2004_files/rk-standards-as-iso2.pdf

ISO9000シリーズの用語の定義は、ISO8402:1986 「品質-用語」としてまず制定された。最新版はISO9000:2015である。ISO9000:2015はJIS Q 9000:2015としてJIS化されている。

ISO15489:2001はJIS X 0902: 2005、ISO15489: 2016はJIS X 0902: 2019である。

そこで引き続き、recordやdocumentがどのように定義されているのかを見てみる。(関連する用語も取り上げる)


ISO9000:2015/ JIS Q 9000:2015
https://webdesk.jsa.or.jp/books/W11M0090/index/?bunsyo_id=JIS+Q+9000%3A2015
(NDLサーチ、Cinii Booksでヒットしなかったので版元へのリンク)

対象(object)、実体(entity)、項目(item)・・・「認識できるもの又は考えられるもの全て」

データ(data)・・・「対象に関する事実」

情報(information)・・・「意味のあるデータ」

文書(document)・・・「情報及びそれが含まれている媒体」
※例 記録、仕様書、手順を記した文書、図面、報告書、規格
※注記1 媒体としては、紙、磁気、電子式若しくは光学式コンピュータディスク、写真若しくはマスターサンプル、又はこれらの組合せがありうる。
(注2以下略)

組織(organization)・・・「自らの目標を達成するため、責任、権限及び相互関係を伴う独自の機能をもつ、個人又はグループ」
(注1以下略)

文書化した情報(documented information)・・・「組織が管理し、維持するよう要求されている情報、及びそれが含まれている媒体」
(注1以下略)

記録(record)・・・「達成した結果を記述した、又は実施した活動の証拠を提供する文書」
(注1以下略)


規格(標準)の世界の用語では「記録」は「文書」の一部である。

ISO8402:1986はまだ参照できていないので、次回はこれについてを考えている。

recordor(deponentia)に関するメモ

4月からラテン語を学習中だ。使っているテキストは、Etsuji Matsumoto, LINGVA LATINA。
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000096-I002704254-00

全24課で、ようやく23課までたどり着いた。時、法、人称すべての形を持っていない、不完全動詞として、まずmemini(憶えている)が取り上げられている。

「メメント・モリ」の「メメント」の部分はこのmemini(発音はメミニ)の命令法単数です。
https://www.latin-is-simple.com/en/vocabulary/verb/7057/?h=memento

この動詞は現在のことを表すには、通常の動詞の完了語尾を、未完了には過去完了の語尾を、未来には未来完了の語尾を用いる。過去を表すことができない。
https://www.latin-is-simple.com/en/vocabulary/verb/7057/?h=memini

過去を表す方法としてテキストは次のように記している。(94頁)

「過去の意味を表すには recordatus, sum, eram(<recordor)を用いる. 又は mihi venit in mentem.)」

Mihi venit in mentem. は「私の心の中に来ました」の意味。

recordorはデポネンシアと呼ばれる動詞の一つで、「形(活用)は受動態と同じく」「意味は能動」という性質を持つ。

recordorの活用
https://www.latin-is-simple.com/en/vocabulary/verb/5946/?h=recordor

ラテン語やロマンス語系の言葉では、英語のdocumentやarchiveと親戚と思われる単語を目にすることがあるけれども、recordの親戚に(見た目)思われる単語に出くわしたことがなかった。なので、meminiの説明で、recordorが登場した時は「おぉっ!」と思わず小さく叫んだ。意味は上のリンク先にあるように、

to think over
to call mind
to remember

「思い出す」「想起する」といったところ。

『英語語源辞典』https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002847394-00
のrecordの項には

「(O)F recorder……// L recordari ← RE- (A) +cord-, cor (’HEART’)」とある。

国立公文書館「アーキビスト養成・認証制度調査報告書」(2019年11月)

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独立行政法人国立公文書館が「アーキビスト養成・認証制度調査報告書」を公開しました。
http://www.archives.go.jp/about/report/pdf/archivist_report_R01.pdf

アメリカ、イギリス、フランス、オーストラリア、韓国、中国(参考)におけるアーキビストの養成と認証制度に関わる詳細な報告です。アーカイブズ関係者のみならず、文化機関の人材養成や専門職制度に関心のある方々には広く参考となるレポートです。

アーキビスト養成・認証制度
調査報告書
令和元年(2019)11 月
独立行政法人 国立公文書館

http://www.archives.go.jp/about/report/pdf/archivist_report_R01.pdf

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【目次】

Ⅰ 日本におけるアーキビスト養成・認証制度

1 日本におけるアーキビスト養成
1.1 高等教育機関における養成
1.2 その他の機関における養成

2 日本におけるアーキビスト関連認証・資格制
2.1 関連認証・資格制度
2.2 参考となる資格制度

Ⅱ 諸外国におけるアーキビスト養成・認証制度
1 アメリカ
2 イギリス
3 フランス
4 オーストラリア
5 韓国

(参考)
6 中国 ……………………………….

資料 日本における既存のアーキビスト等養成・認証制度

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【執筆者】
アメリカ : 坂口貴弘(創価大学講師)
イギリス : 白川栄美(日本アーカイブズ学会役員)
フランス : 岡崎敦 (九州大学大学院教授)
オーストラリア : 森本祥子(東京大学文書館准教授)
韓国 : 元ナミ (京都大学大学文書館助教)

(参考) 中国 : 大澤武彦(国立公文書館公文書専門官)

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【編集】
独立行政法人国立公文書館統括公文書専門官室(人材育成担当)

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recordに関するメモ- ISO14589とGDPR

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筆者は以前、大学院レベルのレコード・マネジメントの教科書Elizabeth Shepherd , Geoffrey Yeo, Managing Records: A Handbook of Principles and Practice, 2003の翻訳に関わったことがある。これは森本祥子他訳『レコード・マネジメント・ハンドブック:記録管理・アーカイブズ管理のための』として2016年に日外アソシエーツから出版された。
http://www.nichigai.co.jp/cgi-bin/nga_search.cgi?KIND=BOOK1&ID=A2611

原書で用いられているrecordとdocumentはそれぞれ「レコード」「ドキュメント」という日本語をあてた。訳書ではそれぞれ次のような説明がなされている。(本書全体を読む時間がない方も、以下の部分を含む第1章はぜひ一読をお勧めする。訳は平野泉氏。)

「本書では、ある活動の記録された証拠であれば何でもレコードであるととらえることにする。
レコードを定義するのは、物理的フォーマットでも、保存のための媒体でも、作成からの経過期間でも、長期に保存されるという事実でもない。またレコードは、単に記録された情報の一形式だというわけでもない。レコードの本質的な特徴は、それがある特定の活動についての証拠を提供するという点にある。」(訳書21ページ)

「ドキュメントという語は、日常会話でも、法律やコンピュータ関連の専門分野などでも、さまざまな使われ方をしている。レコード・マネージャーの中には、ドキュメントとレコードを同義語であるかのように用いる人もいれば、ドキュメントを「未完成の状態で、レコードとして取り込まれていないもの」と定義する人もいる。本書は、どちらの用法にも従わない。
より有益なのはローベック、ブラウンおよびスティーブンス(Robek, Brown and Stephens, 1995.4 )の定義である。彼らによれば「ドキュメント」とは、通常「『最小のファイリング単位』であり、一般的には書簡、様式、報告書その他、ファイリングシステム内に保管される単一のアイテムを意味する」。ロバーツ(Roberts, 1994, 19)は、さらに二つの性質を挙げている。彼によれば、ドキュメントは「他のドキュメントとは別個に識別可能」なものであり、ドキュメントを構成するテキスト上の(そして時に視覚的な)要素間には論理的関係があるという。これらの定義は、紙媒体のドキュメントにも、電子ドキュメントにも適用可能である。
・・・(中略)・・・
未記入の申請書、絵はがき、広報用ポスター、参考図書もドキュメントではある。しかしそれはレコードではない(図1.6)。書式類は、それが記入され、何らかの行動を開始するために伝達されればレコードとなる。」(訳書36-37ページ)

ところで、非英語圏のレコード・マネジメントやアーカイブズ関連の文献では、recordはあらわれない(当然ですが)。国や地域による伝統と国際標準をどう考えたらよいのか、といったことも頭をよぎる…。

記録管理に関わる国際標準ISO15490-1(2016)Information and documentation — Records management — Part 1: Concepts and principles は英語版の他にフランス語版も発行されている。Information et documentation — Gestion des documents d’activité —Partie 1: Concepts et principes。そこで、英語におけるrecordはフランス語では何と表現されるのか、単純に比較してみた。

Recordの定義に関わる3.14はそれぞれ次のような文章である。

—————

3.14
record(s)
information created, received and maintained as evidence (3.10) and as an asset by an organization or person, in pursuit of legal obligations or in the transaction (3.18) of business

3.14
document(s) d’activité
informations créées, reçues et préservées comme preuve (3.10) et actif par une personne physique ou morale dans l’exercice de ses obligations légales ou la conduite des opérations (3.18) liées à son activité

—————

つまり、record = document(s) d’activité である。recordとは活動に関わる文書、という形で両者を等しいものとしている。

なおつい先日(2019年11月20日)発行された、ISO15489-1(2016)を元にしたJIS X0902-1(2019)は英語版からの翻訳である。

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EUが2016年4月に定めた「個人データの取扱いと関連する自然人の保護に関する、及び、そのデータの自由な移転に関する、並びに、指令95/46/EC を廃止する欧州議会及び理事会の2016 年4 月27 日の規則(EU) 2016/679」(いわゆるGDPR)にもrecordに関する規定がある。第30条では記録すべきものとして「取扱活動の記録」(英語版はRecords of processing activities)を規定する。これは個人データそのものの話ではなく、データの管理者(controller)側の話である。管理者が保管すべき、取扱活動の記録(record)とは何かを定めたもの。なお、GDPR自体にはこの記録の保管期間に関する定めは見当たらない。別に調べる必要がある。

ここではこの30条の内容には立ち入るわけではない。記録管理という専門的な分野に関する規定ではなく、EUの一般的な公文書ではrecordはどう翻訳されるのかについての覚えとして、各国語版の第30条のタイトルを抜き出してみた。

GPPR30条
https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?qid=1574224439100&uri=CELEX:02016R0679-20160504
https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?qid=1574224439100&uri=CELEX:32016R0679

日本語(個人情報保護委員会による仮訳)では
「取扱活動の記録」
https://www.ppc.go.jp/files/pdf/gdpr-provisions-ja.pdf

ブルガリア語 BG
Регистри на дейностите по обработване

スペイン語 ES
Registro de las actividades de tratamiento

チェコ語 CS
Záznamy o činnostech zpracování

デンマーク語 DA
Fortegnelser over behandlingsaktiviteter

ドイツ語 DE
Verzeichnis von Verarbeitungstätigkeiten

エストニア語 ET
Isikuandmete töötlemise toimingute registreerimine

現代ギリシア語 EL
Αρχεία των δραστηριοτήτων επεξεργασίας

英語 EN
Records of processing activities

フランス語 FR
Registre des activités de traitement

アイルランド語 GA
Taifid de ghníomhaíochtaí próiseála

クロアチア語 HR
Evidencija aktivnosti obrade

イタリア語 IT
Registri delle attività di trattamento

ラトビア語 LV
Apstrādes darbību reģistrēšana

リトアニア語 LT
Duomenų tvarkymo veiklos įrašai

ハンガリー語 HU
Az adatkezelési tevékenységek nyilvántartása

マルタ語 MT
Reġistru tal-attivitajiet ta’ pproċessar

オランダ語 NL
Register van de verwerkingsactiviteiten

ポーランド語 PL
Rejestrowanie czynności przetwarzania

ポルトガル語 PT
Registos das atividades de tratamento

ルーマニア語 RO
Evidențele activităților de prelucrare

スロバキア語 SK
Záznamy o spracovateľských činnostiach

スロベニア語 SL
Evidenca dejavnosti obdelave

フィンランド語 FI
Seloste käsittelytoimista

スウェーデン語 SV
Register över behandling

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【参考】

中島康比古「記録管理の国際標準ISO15489-1の改定について」
ISO15489の改訂内容について知るための最良の文献です。

http://www.archives.go.jp/publication/archives/no061/5131

ISO 639言語コード
https://www.asahi-net.or.jp/~ax2s-kmtn/ref/iso639.html