神山復生病院 復生記念館

一般財団法人神山復生会 神山復生病院 復生記念館を訪問しました(2017年9月19日)。

場所は静岡県御殿場市。わたしはその日のお昼ちょっと前に同県湖西市にある豊田佐吉記念館を出発し東名高速を御殿場方面に向かい、途中昼食休憩をはさんで午後2時半ごろに到着、学芸員の森下裕子さんに館内を案内していただきました。

神山復生病院は1889年(明治22年)にパリ外国宣教会のジェルマン・レジェ・テストウィド神父によって現在の地に開設されたハンセン病療養施設です。現在記念館になっているのは1897年(明治30年)に司祭館として建設された建物。

いただいた「神山復生病院のあゆみ」(年表)によると、同病院は1901年に財団法人神山復生病院となり、パリ外国宣教会の司祭、岩下壮一神父、千葉大樹神父、クリスト・ロア宣教修道女会のシスター方が運営に携わり、2000年にハンセン病療養所から一般の病院に転換、2012年に一般財団法人神山復生会となり今日に至っています。

ハンセン病療養施設から一般の病院に転換した翌年(2001年)旧病棟を解体し、2002年に聖堂と新病棟を竣工・開院するとともに、2004年には旧司祭館を転用して復生記念館が開設されました。

この度訪問した記念館は、昨年(2016年)11月に創建時の姿に復元してリニューアルオープンした施設です。リニューアルオープン後の記念館については、ハンセン病制圧活動サイト写真入りの詳しい紹介記事を掲載していますのでそちらをご覧ください。

創建時の姿に復元してのリニューアルオープンに当たっては、建築の特徴がよりよく示されるように、それ以前よりは展示品を少なくしたというお話でした。

復生記念館の運営に関しては、クリスト・ロア宣教修道女会のシスター秋本が、現在館長を務めておられます。学芸員の森下さんは2004年(平成16年)に資料データベース化の仕事のために神山復生会で働くことになり、以来、資料整理のみならず、展示、復元プロジェクト等を担当し、現在は記念館に関わる実務を一人で担当しておられるということです。記念館横に立つ記念館別館の一部が収蔵庫になっており、そこで資料を管理しています。(資料に関しては、復生記念館に直接お問い合わせください。電話0550-87-3509、朝9時から受付)。復生記念館の仕事では、見学案内や展示、資料整理、資料研究など狭義の学芸員の仕事のほか、病院関係者や現在も病院内で生活を続ける5名のハンセン病元患者の方々、シスター方といったさまざまな関係者とのコミュニケーションがとても重要であると強く感じました。

いただいた名刺の裏には神山復生会病院の理念が記されていました。

《理念》
神山復生病院は
キリストの愛に基づいて
病める人も健やかな人も
神によって創られた人間として
喜びも苦しみも共にしながら
一人ひとりの命を大切にし
希望をもって医療と福祉に献身します

 

復生記念館は、日本ではじめてハンセン病療養施設として開設された、神山復生病院を中心とするコミュニティの記録と記憶を未来に伝える場所です。キリストの愛に基づいた医療・福祉の歩みを、広く社会に伝える場として発展していってほしいと願います。

 

《関連ページ》

一般財団法人神山復生会 神山復生病院 復生記念館のページ
http://www.fukusei.jp/memorialhall/

ハンセン病制圧活動サイト 神山復生病院のあゆみ・復生記念館の展示を通してみる
http://leprosy.jp/people/plus07/

ハンセン病制圧活動サイト 神山復生病院・復生記念館
http://leprosy.jp/japan/sanatoriums/sanatorium06/

「近現代アーカイブズにおける秘密情報保護と公開促進の両立に向けた研究」ニューオーリンズでのインタビューまとめ

創価大学創価教育研究所講師坂口貴弘さんの「近現代アーカイブズにおける秘密情報保護と公開促進の両立に向けた研究」の2016年度の調査(2017年2月実施)に立教大学共生社会研究センター・アーキビストの平野泉さんとともに協力しました。その概要は2017年5月12日開催の第76回デジタルアーカイブサロン「アーカイブズにおける秘密保護と公開の問題について」でお話いたしました。私の担当は2月20~21日に訪問した米国ニューオーリンズ市内のカトリック系宗教アーカイブズ施設その他です。

JSPS 科研費 JP15K00467 https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-15K00467/

デジタルアーカイブサロン当日の配布資料改訂版の掲載に続き、インタビュー内容のまとめを掲載します。

(PDF)「近現代アーカイブズにおける秘密情報保護と公開促進の両立に向けた研究」ニューオーリンズでのインタビューまとめ

このまとめの基になったメモは、調査が終了して帰国直後の2月27日に平野泉さんが作成されました。私の手元のメモと付き合わせてみましたが、よくぞここまで、というほどに聞き取り内容が細かく記載されています(調査全体を通じて通訳はなし)。その平野さん作成メモのニューオーリンズ調査分に、必要な情報や説明を加え、ここでは不必要な部分は削除し、整理し直したものが今回アップロードした資料です。本資料の文責は松崎にあります。

Interviews-in-New-Orleans

 

第76回デジタルアーカイブサロン「アーカイブズにおける秘密保護と公開の問題について:カトリック系宗教アーカイブズを中心に」(配布資料改訂版)

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5月12日に開催された第76回デジタルアーカイブサロン「アーカイブズにおける秘密保護と公開の問題について」のうち、私が担当した部分「カトリック系宗教アーカイブズを中心に」に関する配布資料の改定版を作成しました。

配布資料「カトリック系宗教アーカイブズを中心に」改訂版
https://archiveskoubou.files.wordpress.com/2017/05/catholic-archives-institutions-in-new-orleans2.pdf

今回の発表は創価大学創価教育研究所坂口貴弘講師の科研費の助成を受けた研究「近現代アーカイブズにおける秘密情報保護と公開促進の両立に向けた研究」成果の一部です。

JSPS科研費 JP15K00467  https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-15K00467/

立教大学共生社会研究センターアーキビストの平野泉さんとともに、坂口さんの米国のアーカイブズ機関に関する調査に協力しました。

当日の配布資料の一部訂正(年号と人名)、紹介された文献に2件追加を行いました。見やすさを考えてレイアウトも若干変更しました。

配布資料「カトリック系宗教アーカイブズを中心に」改訂版

第76回デジタルアーカイブサロンのフェイスブックページ
https://www.facebook.com/events/1944392125837385/

大仙市アーカイブズ開館記念行事(2017.5.3) 参加記

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5月3日(2017 年)、秋田県大仙市で開催された大仙市アーカイブズ開館記念行事に参加いたしました。当日記念講演に登壇された全国歴史資料保存利用機関連絡協議会(全史料協)の定兼学会長から参加記執筆の依頼を受けました。同協議会サイトに本日掲載されたとの連絡をいただきました。ご笑覧いただければ幸いです。

http://jsai.jp/ibbs/b20170510.pdf.pdf

全史料協サイト・トップページはこちら
http://www.jsai.jp/

大仙市アーカイブズのページ
http://www.city.daisen.akita.jp/docs/2014040200045/

 

当日撮影した画像をいくつか掲載いたします。

一橋大学に大学文書館(アーカイブズ)を

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以下の記事は、一般社団法人如水会発行『如水会々報』2017年3月号より、同会の許諾を得て転載するものです。


一橋大学に大学文書館(アーカイブズ)を

松崎裕子 (63社)

『如水会々報』2016年11月号「ラウンジ」欄に掲載された大久保秀典様の「貴重資料の宝庫・学園史資料室の有効活用を!」を拝読させていただいた。筆者は2004年から公益財団法人渋沢栄一記念財団情報資源センターで企業アーカイブズの振興に取り組むとともに、株式会社アーカイブズ工房代表取締役として企業史料の整理・活用の実務・コンサルティング・教育研修業務にも携わっている。日頃より一橋大学における歴史的に価値ある文書の保存・管理・公開状況が、他大学から大きく遅れている状況を憂慮してきたため、大久保様のご提案にいたく心を動かされた。この小文では、他大学における歴史的な文書や資料の保存、管理、公開の現況について、企業アーカイブズの状況を交えながら、ご紹介させていただく。

さて、アーカイブズとは何か。それは組織が作成したり、組織外から収受した文書記録のうち、歴史的に重要で長期に保存する必要があるものを管理・提供する部署や施設であり、文書館とも称する。歴史的に重要な資料自体もアーカイブズと呼ばれる。私が専門とする企業アーカイブズの場合、企業活動を通じて会社が作成するさまざまな記録・資料それ自体と、これらを保存、管理、提供・活用する部署を指す。企業のアーカイブズは、今日までの事業の証拠(エビデンス)としてアカウンタビリティを支え、それによって会社への信頼を高める。さらに、企業文化を伝えるメディアとしての役割を果たし、企業活動に永続性を与える。激しい環境変化にさらされる今日、企業がサステナブル(持続可能)であり続けるために、アーカイブズはますます必要なものと認識されつつある。

日本では、明治以来、図書館、博物館の制度は社会に根付いたが、アーカイブズ(文書館)の発達は遅れた。国のレベルでは英国で1838年に、米国では1934年に国立公文書館が設置された。日本の国立公文書館の場合、1971年に開館したものの、公文書管理について定めた法令(公文書等の管理に関する法律)が初めて制定されたのは2009年、ごく最近のことである。この法律の制定によって、国の行政機関と独立行政法人等(国立大学法人を含む)では、業務の過程で作成・収受した公文書(正確には国の行政機関の場合は「行政文書」、独立行政法人や国立大学法人などの場合は「法人文書」)を適切に管理し、歴史的に価値ある文書に関しては国立公文書館に移管し、永久保存し、一般の国民に提供することが定められた。国立大学法人もこの法律に従う必要が生じた。

この法律では、歴史的に価値ある文書を国立公文書館に移管せず、各大学の中に「国立公文書館に類する機能を有するものとして、公文書管理法に基づき定められた施設」において管理するオプションも用意された。旧帝国大学をはじめ、一橋大学と縁の深い、東京外国語大学や東京工業大学はこちらを選択し、自分たちが作成・収受した文書記録を自校内で、法律に定められた適切な施設において、また多くの場合、文書管理についての専門的教育を受けたアーキビストを配置して、管理している。国立公文書館のウェブサイトによれば、2016年11月6日現在、こちらのオプションを選択した機関は次の通りである。

宮内庁宮内公文書館
外務省外交史料館
日本銀行金融研究所アーカイブ
東北大学学術資源研究公開センター 史料館公文書室
東京大学文書館
東京外国語大学文書館
東京工業大学博物館資史料館部門公文書室
名古屋大学大学文書資料室
京都大学大学文書館
大阪大学アーカイブズ
神戸大学附属図書館大学文書史料室
広島大学文書館
九州大学大学文書館

(注─旧帝国大学のうち、北海道大学は現在内閣府に指定申請中)

これらのアーカイブズでは、総務課をはじめとする事務組織から文書の移管を受けてこれを管理・公開するほか、大学史上重要な役割を果たした過去の学長や著名な研究者等に関する資料も寄贈・寄託を受けて管理・公開している。

一橋大学の場合、残念なことにアーカイブズの整備が大幅に遅れている。国民の求めに応じて公文書を開示するにあたっては、情報公開法で対応している。情報公開という趣旨では問題はないものの、歴史的に価値をもつ文書の長期保存と公開・利用のためには、本来であればアーカイブズ(文書館)に移管して管理・公開するのがよりよいモデルである。実はすでに小平の旧図書館はリモデルされて大学文書館に即対応できるよう整備済みである。にもかかわらず、現在のところ内閣府からの「国立公文書館に類する機能を有するものとして、公文書管理法に基づき定められた施設」の指定に向けた動きはまったくなされていないようである。

また、国立大学に限らず、私立大学・公立大学を含めた大学における大学史の編纂と資料保存に関する情報交換や交流の場として、1980年代から、全国大学史資料協議会が活動している。先に上げた国立大学のほか、早稲田、慶應義塾、上智、明治、法政、立教、学習院、青山学院、立命館、同志社をはじめ、全国で60以上の大学が加盟している。残念ながら、一橋大学はここにも未加盟である。

企業アーカイブズに目を向けてみると、フォーチュン500に登場するような欧米の企業にはアーカイブズ部署が設置され、過去の文書記録や情報を確実に保管・管理・提供し、アカウンタビリティと企業文化継承・ブランディングのための情報基盤としている会社が数多くある。筆者が業務上頻繁に交流している企業アーカイブズには、イングランド銀行、HSBC(香港上海銀行)、ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド、ロスチャイルド(以上英国)、コカ・コーラ社、マッキンゼー社、IBM社(以上米国)、ホフマン・ラ・ロシュ社(スイス)、マースク社(デンマーク)、ゴードレージ社(インド)などがある。

日本のビジネス界では、1981年に当時の経団連の花村仁八郎副会長・事務総長が音頭を取り、企業史料協議会が結成された。現在の会長は歌田勝弘元味の素会長である。会員企業は社内における過去の歴史的な文書資料やモノ資料の保存、整理、活用に熱心に取り組んでいる。同協議会にはトヨタ自動車をはじめとする、各業界を代表する企業のアーカイブズが加わっている。

さらに近年は、社史編纂のために収集した資料を基に、アーカイブズを整備し、社員教育やブランディング、あるいは企業ミュージアムに役立てるほか、グローバリゼーションに伴い、ガバナンス強化や情報開示を進めていく基盤にしようという動きも活発化している。

グローバル化は一方でデジタル化を伴っている。諸外国の企業・大学は、自分たちの過去の歴史に関する情報、場合によっては歴史資料自体をインターネットで世界に提供し、組織の広報・マーケティング・情報開示のツールとしている。大学も世界中から優秀な学生を集めるために、自分たちの過去のヘリテージを活用している。日本国内の例であるが、2016年度に内閣府から前記の指定を受けた東京外国語大学文書館のアーキビストによると、同大における文書館設置は「大学の広報機能の強化のため」と明確に位置付けられているという。そのため展示やフェイスブックなどを通じて積極的に大学の歴史情報を発信している。

大学も淘汰の時代に入っている。過去において輝かしい栄光と持つ組織といえども、永遠に盤石ではありえない。大学という存在もゴーイングコンサーンであり続ける意志を明確にする必要がある。企業の第一線の方々の目にはなかなか触れない分野であるが、アーカイブズの視点から眺めてみると、一橋大学の学園史資料関係のリソース(歴史的に価値ある法人文書、歴史資料等)の保存・管理・活用は、変化の激しい今日の環境の中で生き残っていくための情報基盤としては、まことに心もとない状況であると言わざるを得ない。

(日本アーカイブズ学会登録アーキビスト、(株)アーカイブズ工房代表取締役)

*国立公文書館に類する施設
http://www.archives.go.jp/links/#Sec_01

*全国大学史資料協議会
http://www.universityarchives.jp/membership.html

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(補記)

上の記事の公開後、北海道大学大学大学文書館公文書室筑波大学アーカイブズが内閣府からの指定を受けました。

 

『レコード・マネジメント・ハンドブック : 記録管理・アーカイブズ管理のための』紹介・書評

 

出版後間もなくご紹介いただいた方々ありがとうございました。その後2016年度末に少なくとも3本の書評が公刊されました。いずれも丁寧にお読みいただいたことが伝わってくるもので本当にありがたく感じています。ある程度長い分量の書評記事では、批判や問題提起といったものも提示されて、今後この分野での研究や執筆を進めて行くうえで、たいへん参考になるものと思われます。以下箇条書きですが、いくつかメモしておきます。

・オリジナルの英語原文と対象しながら読んでくださった富永さんからは、本書は「標準的教科書というよりは議論の書」であり、オリジナル版も翻訳版もよみずらい。その理由は標準的な考え方と原著者独自の考え方を弁別しながら読まねばならない点がひとつ。もうひとつは原著者の実務経験を反映した「詳細なガイダンスと、より抽象度の高い議論とが本文中に混然一体となっている点」(富永、80ページ)

・実務の「ハンドブック」であるならば、やはり原語をカタカナ表記した用語に置き換えるのではなく、日本の現場で用いられている、「自分たちが使用している用語への『再翻訳』表現が必要」(秋山、69ページ)

・本書では「現秩序を保持するという原則」は紙の世界のレコードに関するものという立場だが、コンテクストを把握するうえでこの原則は重要であり、レコード形式の如何を問わないのではないか。「最終的には個別に判断することになる」のではないか。(渡邊、89ページ)

・「証拠的価値」を「情報的価値」「情報提供用ドキュメント」(本書中の「情報プロダクト」に相当)よりも「優先することを強調し過ぎることに若干のリスクを感じる」(渡邊、90ページ)

・日本のアーカイブズ学におけるappraisalあるいは「評価選別」の今後(渡邊、90ページ)

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◎富永一也 『記録と史料』(27):2017.3
http://www.jsai.jp/kanko/kaisi/kaisi27.html

◎秋山淳子 『レコード・マネジメント』(72):2017.3
https://www.jstage.jst.go.jp/…/72/0/72_68/_article/-char/ja/

◎渡邊健 『GCAS report = 学習院大学大学院人文科学研究科アーカイブズ学専攻研究年報』(6):2017.2

◎山田敏史 専門図書館協議会『専門図書館』 (281):2017.1 http://www.jsla.or.jp/publication/bulletin/no281/

◎藤吉圭二 『アーカイブズ学研究 』日本アーカイブズ学会, (25):2016.12
https://ndlopac.ndl.go.jp/F/?func=full-set-set&set_number=188163&set_entry=000001&format=999

◎中島康比古 『情報の科学と技術』情報科学技術協会, (66):2016.11
https://www.jstage.jst.go.jp/…/66/11/66_…/_article/-char/ja/ http://doi.org/10.18919/jkg.66.11_601

◎石井昭紀 『情報管理』科学技術振興機構, Vol. 59 (2016) No. 7 p. 498
https://www.jstage.jst.go.jp/…/…/7/59_498/_article/-char/ja/ http://doi.org/10.1241/johokanri.59.498

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『レコード・マネジメント・ハンドブック : 記録管理・アーカイブズ管理のための』 エリザベス・シェパード、ジェフリー・ヨー共著 【編・訳】森本祥子、平野泉、松崎裕子 【訳】清原和之、齋藤柳子、坂口貴弘、清水善仁、白川栄美、渡辺悦子

http://www.nichigai.co.jp/cgi-bin/nga_search.cgi?KIND=BOOK&ID=A2611

経営支援セミナーに参加

きょうのセミナーは、お世話になっている会計士の先生の事務所(税理士法人C&C)主催。事務所とは3年半ぐらいのお付き合い。いろいろセミナーなど行っているようです。今回初めてどうですか、と声をかけられました。。

で、前半は(「フィンテック及び証憑ストレージサービス等の特長」)、

・平成28年の改正電子帳簿保存法による国税関係帳簿書類のスキャナ保存制度
・クラウド会計(銀行信販データの自動受信システムによる仕訳の二重計上防止や記帳、正確な帳簿の作成などの経理事務省力化)

会計にかかわる文書管理の一部と関係があります。記録管理的にとても面白かったですね。

ちなみに講師は(株)TKCの方々で、ここの証憑ストレージサービスはJIIMA(公益社団法人日本文書情報マネジメント協会)の平成28年改正法令基準電帳法スキャナ保存ソフト法的要件認証の第1号認証を受けているということでした。

後半は、静岡県富士市産業支援センターf-Bizセンター長の小出宗昭さんの講演(「中小企業の事業革新(イノベーション)」)
http://www.f-biz.jp/

講演では富士市立産業支援センターがどこにあるのか、というお話はでてきませんでしたが、ウェブをみてみると、富士市立中央図書館分館1階にあります。サイトによると「富士市立中央図書館と連携し、相談内容に応じた資料や専門書を紹介」しているようです。

お話では公的産業支援はどうあるべきか?というところから始まりました。講師の考えでは

「公的産業支援とは公による「ビジネスコンサルティング業」であるべき」

であり、わかりやすい結果を出す、ことが目的といいます。

いまはモノが売れない時代で、とにかく売り上げが伸びない。

売り上げの流れを変える3つの戦略、として
(1)真のセールスポイントを活かす
(2)ターゲットをしぼる
(3)連携する、つながる、コラボレーションする
があげられました。

そのあとは事例です。

(株)司技研
丸金製紙(株)
マルミヤ食品(株)
(株)高年社60
金沢豆腐店
かわむら呉服店
ハヤブサ((有)スノーチャイルド)

廃業寸前→コンサル→結果

というのがはっきりしています。

アーカイブズに活かせるものはあるかしら・・・?

と思いつつ帰ってきました。

『ライブラリー・リソース・ガイド』第18号

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『ライブラリー・リソース・ガイド』第18号を読みました。今号はアーカイブズの話が中心です(以前の号を全部読んでいるわけではないです。)

http://www.arg.ne.jp/node/8867

[目次]

岡本真「『意思を持って雑誌をつくる』ということ」

大原ケイ「壮大なバイオグラフィーとしての大統領図書館」

岡本真「総理大臣資料はどこにある?」

岡本真「『総理大臣資料』全調査」

福田康夫 元内閣総理大臣 特別インタビュー/インタビュアー:松岡資明 「公文書の扱いとその国のかたち」

猪谷千香「図書館エスノグラフィ 東京学芸大学学校図書館 運営専門委員会」

佐藤翔「連載 かたつむりは電子図書館の夢をみるか LRG編 人並の人生も幸福も期待していなかった図書館情報学徒、10年後の実態」

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米国大統領図書館はいわゆる通常の図書館ではなく、NARA(米国国立公文書館記録管理局)管轄下にあるアーカイブズ機関です。これを読むと、記録の管理にあたっては、大量の公文書のなかから何を残すのか、それを判断し実行する評価選別という作業が存在し、これをアーキビストが行っているということがわかります。この点はライブラリアンの仕事とは異なるので、たぶんこの雑誌の多くの読者の方々である図書館関係者の方は興味深く思われるでしょう。また最近のデジタル化によるオンライン公開なども詳しく紹介しています。

「総理大臣資料」というのは、岡本さんの言葉。

「『総理大臣資料』という言葉には学術的な定義があるわけではなく、私が自分の問題意識を整理しながら考えた言葉である。」(47ページ)

区分として、岡本さんは「公文書類」「(個人蔵の)書類」「日記・日誌」「書状・書簡」「書画類」「著書・蔵書」「愛用品」をあげている。そしてご自身の問題意識としては、「総理大臣資料」のうち「著書・蔵書」が中心ということです。

歴代総理大臣の残した資料(recordsではなくて、もっと広い概念)の所在を包括的に調べてみた、というこれまでになかった取り組みです。今後さらに体系化されるといいと思います。(国会図書館のリサーチ・ナビに「総理大臣資料」としてリンクできたらいいのでは、などとも思います。)

元日本経済新聞の松岡記者による福田元首相のインタビュー記事はぜひ多くの人に読んでいただきたいです。昨今のさまざまな問題の多くが公文書管理と密接に結びついていると思います。記録を着実に後世に伝え、政策形成に役立てていくその意義を語っておられます。

一方、各種図書館所蔵の地域資料や特殊コレクション、いわゆる図書資料とは異なる資料(アーカイブズ的なもの)に関して、さらに同様の調査や整理を期待します。そこにしかない、それ1点しか存在しない、そのような資料類をケアして提供していくことへの関心が高まってほしいなぁと感じます。

今後もこのような方面の企画(とくに地域資料、特殊コレクション関係)を続けてもらえたらなぁ、とおおいに期待するものです。

森本祥子「定例会報告 レコード・アーカイブズ一貫システム構築の視点」(2017年)

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エリザベス・シェパード、ジェフリー・ヨー共著、森本祥子他編訳『レコード・マネジメント・ハンドブック : 記録管理・アーカイブズ管理のための』
http://www.nichigai.co.jp/cgi-bin/nga_search.cgi?KIND=BOOK&ID=A2611
http://www.nichigai.co.jp/PDF/2611-2.pdf (PDF)
https://ndlopac.ndl.go.jp/F/?func=full-set-set&set_number=583389&set_entry=000003&format=999

に関する森本先生の講演会の記録を掲載したARMA東京支部編『Records & information management journal : the information management professionals』第32号(2017年1月)が刊行されました。

◎森本祥子

東京大学文書館准教授)

「定例会報告 レコード・アーカイブズ一貫システム構築の視点」
『Records & information management journal : the information management professionals』ARMA東京支部, (32):2017.1

⇒『レコード・マネジメント・ハンドブック : 記録管理・アーカイブズ管理のための』の編訳者代表の森本祥子先生の講演録です。
講演の主催者で掲載誌を発行するARMAインターナショナル東京支部は会員制をとる専門団体です。「記事本文コピーサービス」 があるとのことです。有償で記事を取り寄せることができるようです。
http://www.arma-tokyo.org/rimjournal.htm

同書に関して現在までに発行された解説、書評・紹介、その他参考文献をまとめました。


【書評・紹介】

◎石井昭紀

公益社団法人日本文書情報マネジメント協会ECM委員会委員長、株式会社イージフCTO)
「図書紹介 『レコード・マネジメント・ハンドブック:記録管理・アーカイブズ管理のための』」
『情報管理』科学技術振興機構, Vol. 59 (2016) No. 7 p. 498
https://www.jstage.jst.go.jp/article/johokanri/59/7/59_498/_article/-char/ja/
http://doi.org/10.1241/johokanri.59.498

◎中島康比古

独立行政法人国立公文書館

「『レコード・マネジメント・ハンドブック-記録管理・アーカイブズ管理のための』エリザベス・シェパード,ジェフリー・ヨー 著」
『情報の科学と技術』情報科学技術協会, Vol. 66 (2016) No. 11 p. 601
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jkg/66/11/66_601/_article/-char/ja/
http://doi.org/10.18919/jkg.66.11_601

◎藤吉圭二

追手門大学教授)
「レコード・マネジメント・ハンドブック : 記録管理・アーカイブズ管理のための エリザベス・シェパード、ジェフリー・ヨー共著 【編・訳】森本祥子、平野泉、松崎裕子 【訳】清原和之、齋藤柳子、坂口貴弘、清水善仁、白川栄美、渡辺悦子」
日本アーカイブズ学会 編『アーカイブズ学研究 』日本アーカイブズ学会, (25):2016.12
https://ndlopac.ndl.go.jp/F/?func=find-c&amp=&amp=&amp=&amp=&amp=&amp=&ccl_term=001%20%3D%20027852266&adjacent=N&x=0&y=0&con_lng=jpn&pds_handle=&pds_handle=

◎山田敏史

(日本レコードマネジメント株式会社
「レコード・マネジメント・ハンドブック―記録管理・アーカイブズ管理のための」
専門図書館協議会機関誌委員会 編『専門図書館』, 専門図書館協議会(281):2017.1.
http://www.jsla.or.jp/publication/bulletin/no281/

ご執筆のみなさま、ありがとうございました。

【その他】松崎が書いた、出版までの経緯など。

◎松崎裕子
「RIM広場 書籍紹介 レコードマネジメント・ハンドブック : 記録管理・アーカイブス管理のための」
『Records & information management journal : the information management professionals』ARMA東京支部, (31):2016.6
https://ndlopac.ndl.go.jp/F/?func=find-c&amp=&amp=&amp=&amp=&amp=&amp=&ccl_term=001%20%3D%20027571583&adjacent=N&x=0&y=0&con_lng=jpn&pds_handle=&pds_handle=

佐藤翔輔「東日本大震災アーカイブを使ってみた」(2017年)

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昨日公開された科学技術振興機構(JST)のジャーナル『情報管理』Vol. 59 (2016) No. 10所収、佐藤翔輔(東北大学災害科学国際研究所)「視点 東日本大震災アーカイブを使ってみた」を読んだ。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/johokanri/59/10/59_690/_html/-char/ja/

この論考は「デジタルアーカイブ」である東日本大震災アーカイブの利活用の事例として、著者が関わった二つの事例を取り上げている。

・宮城県東松島市の東松島市図書館「まちなか震災アーカイブ」

・宮城県多賀城市教育委員会が発行した多賀城市防災教育副読本資料集「命をまもり 未来をひらく」(2016年3月発行)

結論を私なりにまとめると

・デジタルアーカイブの効果的・積極的な利活用のためにはデジタルアーキビストやデジタルキュレーターといった専門的な人材が必要。

・しかし、多くの東日本大震災アーカイブを構築管理している県・市町村などの自治体では、職員の定期的な異動によってこのような専門的な人材を確保すること、養成すること、あるいは専門家コミュニティを構築することは難しい。

・職員の異動はデジタルアーカイブのサステナビリティ(持続可能性)のボトムネック(障害)となっている。

これは、アーカイブズ学の側から、現行の自治体の公文書管理制度(とくにアーカイブズ管理における専門職の不在)による問題─行政の非効率性、時々の担当職員の負担、アカウンタビリティ、市民による過去の行政情報へのアクセスの困難さなど─を指摘してこられた加藤聖文先生(人間文化研究機構国文学研究資料館准教授)の一連の論考を思い起こさせる。

一番最近のものでは

加藤聖文
「公文書管理制度の新しい可能性―市民の行政参加と地域再生―」
『住民と自治』2016年10月号
http://www.jichiken.jp/article_33/

がネットで読める。

ほかに、

加藤聖文
「市民社会における『個人情報』保護のあり方―公開の理念とアーキビストの役割―」
『国文学研究資料館紀要(アーカイブズ研究篇) 』11号、2015年3月13日
http://id.nii.ac.jp/1283/00001467/

も同様の問題を自身のリサーチの経験を通じて明らかにしている。

アーカイブズが持つ情報の価値は現代世界においてますます高まっているにも関わらず、それを有効に、効果的に、効率的に使うための仕組み、とくに専門的な知識と経験を備えた人材が、日本の公的機関では日本的な職場慣行に阻まれて正規職員として配置もされないし、養成もされないのである。

以前「デジタルアーカイブ」関係文献の紹介・批評をしたことがある。
https://archiveskoubou.wordpress.com/2014/05/19/iri-future-archivists/
http://ci.nii.ac.jp/naid/110010043296

これらの文献でもデジタルアーカイブを扱う専門的な人材の養成が必要とされていた。ただし具体的な事例に乏しい印象であった。本稿の冒頭で紹介した佐藤翔輔氏の論考は、実際の経験を通じた発見であると言う点で、価値あるものと思う。

さて、最後に一言。

東日本大震災アーカイブは、伝統的なアーカイブズからみるとコンテンツの集積であって、はたしてこれは、Archives、Archive、Archiv、檔案、档案、(역사적)기록물、Archivo、archīvum、Arkivo、・・・と呼ばれる、コンテンツ(内容物・意味)とコンテクスト(文脈)、ストラクチャ(構造)を持つもの/こととして世界各国で認識されているアーカイブズの話として語れるのか、という疑問を持つアーカイブズ関係者が多いと思う。私自身はいわゆるデジタルアーカイブとアーカイブズはまったく別物ではなく、デジタルアーカイブを構成するコンテンツは、(作成に遡る、目に見えない)コンテクストとストラクチャをもっているが、その部分の(目に見えない)情報の(再)組織化には手をつけない状態なのではないかと思う。デジタルアーカイブ関係者の方々は、とにかく今は(学術的?歴史的に?)「重要」(と思われる)コンテンツをデジタル化して広く流通させることが喫緊の課題と考えておられるように思う。

[追記]

アーカイブズを構成するのはアーカイブズ学やレコード・マネジメントでは「コンテンツ」+「コンテクスト」+「ストラクチャ」である(シェパード&ヨー著、森本他編訳『レコード・マネジメント・ハンドブック―記録管理・アーカイブズ管理のための』2016年 https://ndlopac.ndl.go.jp/F/?func=full-set-set&set_number=359329&set_entry=000002&format=999 他参照)。

作成からアーカイブズとしての利活用までを一連の連続した流れとして考えるレコードキーピング・モデルの場合は「コンテクスト」と「ストラクチャ」は作成段階から明らかであろう。一方、関連する資料を集めた”コレクションとしてのアーカイブズ”の場合、上にのべたように「コンテクスト」と「ストラクチャ」は、資料の集積を編成/記述するという知的作業を行わないことには可視化されない。編成/記述されてはじめて「目にみえるもの」になる。図書資料の場合は、あらかじめ設定された分類項目のどこに1点1点の資料を分類するのか、が目録作成作業の重要な要素であり、目に見えない「コンテクスト」と「ストラクチャ」を見出して編成/記述するというアーカイブズの整理とはまったく異なった作業である。

目に見えない「コンテクスト」と「ストラクチャ」を編成/記述によって可視化する作業に関しては、本ブログで公開させていただいた渡辺悦子さんのエッセイ「グラスゴーの愛橘関連資料を読み解く」がわかりやすい事例である。

アーカイブズ資料を整理するにはこの編成/記述をどこまで行うか、が大きな問題である。そこに費やし得るコスト(時間、おカネ、人)とその資料の重要性によって、編成/記述のレベルは異なりうる。

なぜ「コンテクスト」と「ストラクチャ」が必要なのか?それはエビデンス(証拠)としての価値を担保するためである。エビデンスとしての価値を持たせる必要のないものであるならば、もちろん「コンテクスト」や「ストラクチャ」にかかずらわる必要はない。ただし、その場合、それらをアーカイブ、アーカイブズ、Archives、Archive、Archiv、檔案、档案、(역사적)기록물、Archivo、archīvum、Arkivo、・・・と呼ぶことはためらわれる。

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2016年12月28日 金沢 兼六園

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